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●話題提供―その1

高山市でのユニバーサルデザインの導入

 

山本誠

飛騨高山観光誘致東京事務所所長

 

[公衆トイレの設置状況]

市の設営している、障害者用の公衆トイレは約40。公的な建築物、ホテル(だれでもが入れる施設)についているトイレには、車いす用トイレが40。障害者用のトイレは市内に約80か所である。

高山市の人口は6万7000人。春まつりと秋まつりがある有名な祭には、1日あたり15万人、多い時で20万人のお客さんがくる。人口の約3倍が祭の時に入られることになる。この日にトイレで不自由しないようにと課題に取り組んでいる。

高山市には、車いす利用の方が1500人いる。この方々が街にどんどん出てきて元気になってほしいという願いを込めてトイレも作っている。トイレを作っても、トイレにいくのに段差があって動けないということではピンポイントバリアフリーということになり、あまり意味がないということで、平成8年から道の段差解消ということを進めている。今ではほぼ平らになり、不自由なく動くことができるようになった。

 

[やさしい街角]

行政の進めることは三つ、1]トイレ、2]道路の段差解消、3]ベンチ(お年寄りが街を歩くと非常に疲れやすい。木のベンチが用意されている)である。

平成10年、高山市では293万人まで観光客が伸びた。平成5年は210万人程度。安房トンネルの開通の効果があった。観光地不況の中で、1泊2万5000円の高価な旅館でも、4月10日〜11月10日まで、日祭日とウィークデーを問わずほぼ満室状態が続いている状況だ。結果として、観光地のバリアフリー、ユニバーサルデザイン(ここまでいっていないが…)の試みはよかったのではないかと思っている。

 

[汎用の公衆トイレ]

車いすトイレを作っていった経過の中で、車いすのマークを一つだけ使うということは果たして大勢の方の役に立つのだろうかと考えるようになった。車いすのマークを出すことにより、“使っちゃいけないんだ”と思う方が大勢いるようだ。高山市としては“公衆トイレ、車いすトイレの汎用性を高めたい。どなたにも使ってもらいたい”という思いで障害者トイレを作った。足腰の不自由な方、年寄りのニーズがある。

障害者トイレという言い方も差別用語であるので、汎用トイレを使っている。全国的なレベルでいうと、車いすのマークのあるトイレがあるが、人を呼ばなければ入れないとか、鍵がかかっているとか、精神的なハンディが非常にある。車いすのマークをはずして、“どなたでもご利用ください”とサインを切り替えた。あえてトイレから車いすのマークをはずした。

 

[公衆トイレの基準]

(事例…飛騨の里・みやげ物店)―工夫しているうちに7畳くらいのスペースになってしまった。利用者から注文が出て、“いいトイレだけど今一つ足りない”“これだけスペースがあるなら中にカーテンがほしい。介助の方と入る時に恥ずかしい。カーテンがあると気持ちが休まる”という話を聞いた。さらにいろいろな課題も出てきた。

みやげもの屋も、段差の解消に努め、店内の通路を確保し、観光客・市民の方々に利用度の高いトイレ作りをしようと努力している。しかしまたここで問題が出てきた。高いレベルのトイレを作ろうとすると相当お金がかかる。果たしてそのままでよいのかということだ。

 

 

 

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