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では、車いすの使用者はどうでしょう。近年、車いすマークのついた身障者用トイレや、乳幼児のおむつの交換台などを備えた多目的・多機能トイレがずいぶん増えてきました。けれども、そのようなトイレはまだどこにでもあるわけではないし、障害の種類や程度によって、身障者用であっても使いにくい場合があります。また、せっかく建物の中に使えるトイレがあっても、表示がなくて外からではそれがわからなかったり、逆に、車いすマークがあるからと、中に入っても表示が車いすに座った視線からでは見つけにくい所にあったりすることもあります。トイレの表示がされていない場合もあるので、その時はやはり従業員や職員に尋ねなければなりません。入口に階段があったりして、トイレにたどり着くのが難しい場合もあります。中には、身障者用トイレがあまり使われないため、物置になっていたり、鍵がかかっていたりする所もあるようです。これでは、いざという時、役に立ちません。

それでも最近は、デパートなど公共的な建物の中に、身障者対応のトイレが多くなってきているので、誰かと食事をする時等、デパートの中やその近くの場所でなら、使えるトイレを見つけられるようになってきてはいます。ところが、遅い時間になると、事情は変わってきます。例えば、ゆっくり食事をして、あるいは映画を見て午後10時頃になるとすると、もうデパートは閉まっていて、使えるトイレにアクセスできなくなってしまうこともあります。そのため、身障者用トイレや多目的トイレの使用を必要とする人は、いつどこのトイレが使えるかということを、頭において行動しなくてはならないのです。

 

■ハートビル法

平成6(1994)年、建設省が制定した「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」の通称です。不特定多数の人々が利用する建築物のバリアフリー化を図ることを目的としています。同年、建設省が発表した「生活福祉空間づくり大綱」にあわせて制定されました。

ハートビル法の制定と前後して、その趣旨に沿った各地方公共団体の取り組みも活発化し、全国的に条例や指針等の整備が進みました。それらの中で、トイレに関する問題は欠かせない事項の一つになっています。

 

■交通バリアフリー法

正式には「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」といい、平成12(2000)年に施行されました。高齢者や障害のある人、また妊婦やけが人などの公共交通機関による移動を、より容易で安全なものにするための法律です。

これにより、駅、バスターミナル、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナルなどの旅客施設、鉄道車両、バス、旅客船、航空機など公共的な乗り物のバリアフリー化が進められます。

同時に、駅などの旅客施設を中心とした一定の地区において、旅客施設、周辺の道路、駅前広場、信号機等のバリアフリー化が図られることになっています。

 

●トイレを使う

 

それでは、トイレにたどり着いて、実際に使う時にはどんな問題があるのでしょう。

視覚障害者の場合から見てみましょう。この人たちは一般のトイレを使用しますが、その時戸惑うのがフラッシュレバーの位置です。オーソドックスなレバー式のタイプならその位置は比較的推測しやすいのですが、ボタン式のものだと探すのに苦労することがあります。結局見つからなくて、途方にくれて立ち上がったら、センサーが働いて水が流れたという、あまり笑えない話もあります。

 

 

 

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