(4) 多機能トイレの情報・表示に関する課題
初めての場所に行く時、「自分の利用できるトイレはどこにあるのか」「そのトイレに行くためには、どのようにして行ったらよいのか」「トイレの構造や設備はどうなっているのだろうか。それによって準備するものはなんだろうか」と、いろいろ心配しなければならないのが現状です。そんな時、トイレの情報があれば役立ちますし、外出範囲が広くなればなるほど、詳細な情報が必要となります。「行ってみれば、なんとかなる」「最近はよく見かけるので、多分見つかるだろう」という冒険心も大切ですが、我が国の現在の整備水準では、すべての人が安心して出かけるためには、情報提供システムを欠かすことはできません。
また、人々の往来が盛んになっているにもかかわらず、よそからきた人に対する基本的なサービスの一つである表示(サイン)計画は十分とはいえません。表示の位置や説明方法に、ユニバーサルデザインの考え方による、高齢の人や、目や耳の不自由な人に対する配慮がなされねばならないのは当然のことです。2000年にはようやく絵文字(ピクトグラム)が基準化されましたが、まだまだ研究の必要な分野といえます。
■ADA法(American with Disability Act)
アメリカで1990年に成立した、障害のある人々の権利を広範囲にわたって保護するための法律です。障害のある人が利用しにくい施設を「差別的」と位置づけており、その人々の雇用の機会均等と、環境、製品、サービスへの利用権を保障しています。このADA法により、障害のある人々のアクセス権を保障するための制度的枠組みは大きく前進しました。
●トータルな視点でユニバーサルトイレの位置づけを
ユニバーサルトイレに近づくには、いわゆる「多目的トイレ」の理想形を作ることのみが方法ではありません。一般公共トイレや近隣のトイレなどとの関係、アクセス情報システムまで含めた、トータルな視点からの位置づけが必要だといえるでしょう。
また、トイレというものは、他の社会資源と別個に存在するのではなく、まさに現在の生活環境を反映し、日々改善されている最先端の存在でもあります。
このほど、ユニバーサルトイレ検討委員会において、何度かの検討会や実地調査を重ねていく過程の中で明らかになったのは、以上のことでした。今後とも不断の研究が必要となる所以にほかなりません。