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【質問】 今の話に関連しているのですが、海岸保全区域というのは、汀線から海側50mということですから、今日見て来たような問題を解決するには、非常に不十分だということは一定の理解はしていますが、同じ国土の保全を図る、あるいはそれと両立させるような形で環境の問題を考えるという時の、考える範囲をもうちょっと広げないとどうしようもないな、という感じがしているのですが、その辺については、いかがでしょうか?

 

【来生】 今のお話は、例えば海岸保全区域の範囲を沖に拡大してものを考えるとか、そういうご指摘ですか。

 

【質問】 海側について言えば、やっぱり、もっと沖まで考える、陸側についても、例えば保安林のような問題とか、あるいはもうちょっと、流域圏のような考え方を含めて、何か統一的な、個別の計画の上に上位計画のようなものも必要な気がするんですが?

 

【来生】 海岸保全区域を物理的に拡大するということよりも、今ご指摘があったように、今のやり方というのは、「部分部分で部分的改善を図っている」ということの積み重ねですから、それを、「どうやって総合的に考える手法をつくり上げていくか」ということで、これはやっぱり、計画のシステムなどで個別に行われているものを総合して行くような計画のシステムを作って行く、ということが一番なんだろうと思います。

ですから、国土交通省の方もいらしてますが、ついこの間、提言としてまとめたのも「基本的にはそういう方向でやりましょう」ということでしたので、国土交通省の方から何か言っていただいた方がいいのかもしれない。

 

【回答】 国土交通省海岸室です。まず、沿岸域総合管理研究会を来生先生座長で、清野先生にも入っていただいて議論させていただきまして、6月28日に提言が出ております。

先ほど、議論がございましたが、協議会みたいなものを作らなければいけないだろうという話も、ひとつ提言として盛り込まれております。あと、情報を整備していかないといけない。また、国民へのPRにも努めなければいけない、という話も提言としていただいております。

 

 

【質問】 来生先生に教えていただきたいのですが、先ほどの、波に自分の土地がどんどん削られて、それが無くなってしまう場合、財産が消滅するので、それは非常にまずいので、守らなきゃいけないということになりがちなんですが、例えば、災害保険のように、「火事で家が燃えて財産が消滅した場合に補償してくれる保険制度」などと同じものは作れなくても、お金で補償するなどの方法もあると思うんです。

今、海岸保全の考え方として、海岸線の土地を1mたりとも内側に引いてほしくないという気持ちが強いと思うんですよ。ただ、トータルの面積として見れば、日本全国で侵食されている面積は160haという数字が以前出されていましたが、埋め立てている面積は1年間2,000haあって、国土の総面積はそういう意味では増えていると考えられます。

問題は、個別の、ある場所が削れて、ある場所が増えるとき、そのある場所が削れたものに対する補償がしっかりできるのであれば、構造物で守るという方法をとらなくてもいいような気がするんです。そういう意味で、法律を何らかの格好で変えるなり、新しい法律を作ることで改善するすることというのはできないでしょうか?

 

【来生】 観念的に、新しい制度をつくることは十分可能だと思いますが、一般的に天変地異による財産の変動というものについては、それは誰の責任でもない、という考え方が法律の常識としてあります。

 

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