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近年、侵食対策に頭を抱える海岸が多いことを考えれば、砂浜が広がるということは結構な話と思われるかもしれませんが、砂浜が広がると別の問題が生じます。どのような問題かというと、昔は保安林のすぐそばに建っていた海の家が、砂浜が広がって海がどんどん遠くなってしまったので、もっと前へ出たいということになったのです。しかし、そもそも海浜地というのは国有地ですから占用許可を県の土木事務所からもらわないと施設を建てられないことになっています。しかも海の家というのはあくまで仮設の家で、使用期間が終わったら必ず撤去しないといけないのです。ところがその辺が曖昧なまま海の家が前へ出て行ってしまったのです。それで最終的にはこれは係争案件になって、家屋を取り壊したという話がある場所です。

 

広い砂浜があるがゆえの悩みというか、砂浜が広がるということは土地が広がることですから、この土地の利用という問題が必ず起きるわけで、こういう場所ではよくある問題です。ここからわずか数キロの場所では侵食だと言って騒いでいるのに、ここでは広がる砂浜が問題の原因となっているのは、何ともおかしな話です。

 

【質問】 ここはどれくらいのスピードで砂浜が前進したのですか?

 

【宇多】 年間の前進速度は何メートルかと言われると正確には言えませんが、300m前進するのに30年ぐらいかかっていますので、ざっと割り算すれば1年で10mになりますから、そのくらいの割合でしょう。

 

ところで我々が歩いているところにあるサラサラした砂はとても細かいですが、今、工事で赤土を入れていますね。これは問題だと思うのですが、山砂を入れているのです。本来、九十九里浜の砂には赤土は入ってないので、サラサラとしていて肌に付着しにくい砂でしたが、今はかなり赤土っぽいのが入ってしまっています。これは環境が変わる一因になると思います。本須賀海岸の砂は屏風ヶ浦の崖が崩れた土砂が起源で、泥分の抜けた砂だけが溜まって砂浜となっています。

ちなみに片貝より南の九十九里浜の砂は、九十九里南端にある太東崎以南からの供給土砂が起源です。

 

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海水浴シーズンを前に建設中の海の家(7月)

夏が終われば全て撤去されることが義務付けられている。

 

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赤土と工事

砂浜の利便性を高めるための工事による赤土の流入で、その海岸固有の砂とは異なる成分の土砂が混入する。これは全国の「鳴き砂」の浜が減少する大きな要因となっている。

 

 

 

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