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2000年(平成12年)

平成11年神審第71号
    件名
プレジャーボートシーゼットマリンクラブ2号転覆事件

    事件区分
転覆事件
    言渡年月日
平成12年1月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

佐和明、米原健一、西田克史
    理事官
野村昌志

    受審人
A 職名:シーゼットマリンクラブ2号船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
操舵室上部及び船外機が破損、廃船

    原因
気象・海象(磯波の危険性)に対する配慮不十分

    主文
本件転覆は、磯波の危険性に対する配慮が不十分で、その発生海域への進入を中止しなかったことによって発生したものである。
受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年11月21日10時30分
若狭湾
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートシーゼットマリンクラブ2号
総トン数 1.5トン
全長 6.37メートル
幅 2.19メートル
深さ 1.06メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 66キロワット
3 事実の経過
シーゼットマリンクラブ2号(以下「シーゼット号」という。)は、船外機付きFRP製プレジャーモーターボートで、A受審人が1人で乗り組み、知人3人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.3メートル船尾0.4メートルの喫水をもって、平成10年11月21日10時19分京都府由良川の河口から3キロメートル上流左岸のマリーナを発し、河口から1キロメートル沖合の釣場に向かった。
ところで、シーゼット号は、船首から船尾にかけて二重底が設けられ、その上は船首から船尾方向2.9メートルがキャビンとなっており、その後方に7つの座席が備えられた無蓋の操舵室があり、船尾端には遠隔操縦の船外機が装備され、同機の上部後面の海面から高さ75センチメートルの位置に空気取入口があった。

由良川は、京都府の北西部を北に流れて若狭湾の西部湾奥に注いでいる川で、河口から500メートル上流に架かっている由良川橋梁付近では川幅が500メートルばかりであるが、河口は両岸から堆積した砂によって狭められ、可航幅80メートルの水路ができ、その沖合も堆積した砂で遠浅となっていた。そして、若狭湾口が北に大きく開いていたことから、日本海で北寄りの風が連吹すると、そのうねりが湾奥に侵入し、由良川河口部の浅海域にはしばしば大きな磯波が発生することがあった。
A受審人は、2年前からシーゼット号を操縦して由良川沖合で12回以上魚釣りをした経験を有していたことから、河口部において磯波が発生しやすいことを承知しており、出航に先立ち、あらかじめ新聞等の天気予報やマリーナの従業員から当日の気象情報を入手し、前日京都府北部に発表された強風波浪注意報が継続中であること及び冬型の気圧配置が続いて河口部で磯波が発生していることを知っていたので、河口に近づいたところで海面状態を見て、波高の大きい磯波があれば引き返すつもりであった。

離岸後、A受審人は、操舵室右舷側前部の操縦席で見張りを行いながら操船に当たり、知人3人を操縦席の隣及び後部座席にそれぞれ腰を掛けさせた状態で、機関を全速力前進にかけて河口に向かい、10時23分由良川橋梁下を通過したとき、博奕岬灯台から230度(真方位、以下同じ。)3.4海里の地点で、針路を000度に定め、機関回転数を下げて10.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
10時24分半A受審人は、河口最狭部手前200メートルの地点に至り、針路をその中央に向く024度に転じて前方の海面状態を確認したところ、最狭部沖合250メートル付近の浅海域に、波高2メートルばかりの磯波が発生しているのを認め、シーゼット号を操縦してこの波高の磯波を乗り切った経験はなかったが、この程度の波高であれば何とか通過することができるものと思い、磯波の危険性に配慮せず、同海域への進入を中止して引き返すことなく、針路を保持できる3.0ノットの対地速力に減じて水路の中央を下航した。

A受審人は、河口最狭部を通過したのち、浅瀬を避けて徐々に左転し、機関回転数を適宜調節して針路をほぼ350度に保持しながら磯波が発生している海域を続航中、10時30分少し前高起した磯波を船首方向に認め、これを乗り切ろうと機関回転数を上げた。その直後、シーゼット号は、磯波の中に船首から突入して大量の海水が船尾端まで降り注ぎ、船外機が空気取入口から海水を吸い込んで停止した。
そのため、シーゼット号は、操縦が不能となって船首が左方に大きく振られ、波に横倒しとなり、続けてきた大波を右舷方から受けて船体の右舷側が一挙に持ち上げられ、10時30分博奕岬灯台から236度3.1海里の地点において、船首が290度に向いた状態で左舷側に転覆した。
当時、天候は曇で風力3の北東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
転覆の結果、シーゼット号は、船底を上にしたまま漂流して河口西側の砂浜海岸に打ち上げられ、操舵室上部及び船外機が破損して廃船となり、また、A受審人及び知人3人全員は海中に投げ出されたが、自力で付近の砂浜海岸に上陸した。


(原因)
本件転覆は、若狭湾西部の釣場に向けて京都府由良川を下航中、河口部海域に波高の大きい磯波が立っているのを認めた際、磯波の危険性に対する配慮が不十分で、同海域への進入を中止せず、高起した磯波を受け船外機が停止して船体が波に横倒しになったことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、強風波浪注意報が発表中の状況下、若狭湾西部の釣場に向けて由良川を下航中、河口の手前に差し掛かり、河口部海域に波高の大きい磯波が立っているのを認めた場合、同海域への進入を中止すべき注意義務があった。しかるに、同人は、この程度の波高であれば何とか通過することができるものと思い、進入を中止しなかった職務上の過失により、高起した磯波に船首から突入して船外機が停止し、船体が波に横倒しになり、続けてきた大波を受けてシーゼット号の転覆を招き、操舵室上部及び船外機を破損して廃船に至らしめた。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。


よって主文のとおり裁決する。






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