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2000年(平成12年)

平成11年長審第75号
    件名
貨物船伸幸丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年3月14日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

原清澄、保田稔、坂爪靖
    理事官
山田豊三郎

    受審人
A 職名:伸幸丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
船底外板に破口を伴う多数の凹傷

    原因
針路選定不適切

    主文
本件乗揚は、針路の選定が不適切であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年6月20日03時05分
佐賀県呼子港北方臼島東岸
2 船舶の要目
船種船名 貨物船伸幸丸
総トン数 199トン
登録長 52.16メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 404キロワット
3 事実の経過
伸幸丸は、航行区域を限定沿海区域とする船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人及びB指定海難関係人ほか1人が乗り組み、鋼材672トンを積載し、船首2.90メートル船尾3.90メートルの喫水をもって、平成11年6月19日12時00分大分県大分港を発し、長崎県佐世保港に向かった。
A受審人は、自らが6時から12時までの、B指定海難関係人が0時から6時までの船橋当直をそれぞれ単独で行うこととして九州北岸沖合を西行中、翌20日00時00分筑前大島港避難港北防波堤灯台から198度(真方位、以下同じ。)3.2海里の地点に達したとき、同人と船橋当直を交替することにしたが、B指定海難関係人は長年にわたって単独船橋当直の経験があったうえ、平素から、漁船が多いなどで不安を感じたときには起こすように指示しているし、予定の針路線を海図に記入しているので、同人に船橋当直を任せておいても大丈夫と思い、船舶が輻輳する状況となったときには自らが操船の指揮を執れるよう、速やかにその状況を報告するよう指示することなく、針路を玄界島の少し北方に向けていること、前方1海里ばかりのところに同航船がいることなどを引き継ぎ、降橋して自室で休息した。
船橋当直を引き継いだB指定海難関係人は、A受審人が海図に記載した予定の針路線に従って航行し、01時57分芥屋港第2防波堤灯台から324度2.1海里の地点に達したとき、針路を海図に記載された針路線に沿う250度に定め、機関を全速力前進にかけて10.0ノットの対地速力とし、自動操舵により進行した。
02時35分B指定海難関係人は、鷹島灯台から068.5度3海里の地点に達したとき、右舷前方から前路を左方に横切る態勢で呼子港へ帰港中の漁船群を、左舷前方から前路を右方に横切る態勢で同港から出漁中の漁船群をそれぞれ視認し、船舶が輻輳する状況となったことを知ったものの、長年にわたる単独船橋当直の経験から、これらの他船を避航しながら無難に航行できるものと思い、その状況を速やかにA受審人に報告しないまま、操舵を手動に切り替えるとともに、速力を半速力の7.0ノットに減じて続航した。

B指定海難関係人は、次から次へと前路を横切る漁船を左右に替わすことに気をとられ、02時59分半鷹島灯台から090度370メートルの地点に達したとき、転針予定地点を過ぎて鷹島に接近し過ぎたことに気付き、針路を右に転じることにしたが、レーダーを使用するなどして周囲の島との相対位置関係を確かめなかったので、転針方向の臼島を十分に離す針路にしないで、ほぼ海図に記載された針路となる302度に転じ、同島東岸の岩礁に向首していることに気付かないまま進行した。
転針後、B指定海難関係人は、周囲で操業中のいか釣り漁船の灯火や左方から右方へ移動中のいか釣り漁船に気をとられ、臼島灯台の灯火に気付かないまま続航中、03時05分わずか前左舷船首45度110メートルばかりに突然同灯台の灯火を視認し、臼島に著しく接近していることに気付き、乗揚の危険を感じて機関停止、続いて右舵一杯としたが、及ばず、03時05分臼島灯台から070度100メートルの岩礁に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。

当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期で、視界は良好であった。
A受審人は、自室で休息中、乗揚の衝撃で異状に気付き、直ちに昇橋して事後の処置にあたった。
乗揚の結果、船底外板に破口を伴う多数の凹傷を生じたが、サルベージ会社のタグボートにより引き降ろされ、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、夜間、佐賀県呼子港北東方沖合において、針路を転じる際、針路の選定が不適切で、臼島東岸の岩礁に向首進行したことによって発生したものである。
運航が適切でなかったのは、船長が、無資格の船橋当直者に対して船舶が輻輳する状況となったときには、自ら操船の指揮が執れるよう、速やかにその状況を報告するよう指示しなかったことと、無資格の船橋当直者が、船舶が輻輳する状況となったことを速やかに船長に報告しなかったこととによるものである。


(受審人等の所為)
A受審人は、夜間、九州北岸を無資格者に船橋当直を行わせて西行する場合、船舶が輻輳する状況となったときには、自ら操船の指揮をとれるよう、その状況を速やかに報告するよう指示すべき注意義務があった。しかるに、同人は、船橋当直者が長年にわたって単独船橋当直の経験があったので、同人に当直を任せておいても大丈夫と思い、報告するよう指示しなかった職務上の過失により、自ら操船の指揮が執れず、適切な針路が選定されないまま、臼島東岸の岩礁に向けて進行し、同岩礁に乗り揚げて船底外板に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B指定海難関係人が船舶が輻輳する状況となったことをA受審人に報告しなかったことは、本件発生の原因となる。

B指定海難関係人に対しては勧告しないが、今後、船橋当直中に船舶が輻輳する状況となったときには、速やかに船長に報告するように努めなければならない。

よって主文のとおり裁決する。






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