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2000年(平成12年)

平成11年門審第8号
    件名
漁船種吉丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年2月29日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

阿部能正、供田仁男、清水正男
    理事官
喜多保

    受審人
A 職名:種吉丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船体が大破、のち焼却処分

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発
生したものである。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年5月29日02時00分
宮崎県串間市大納海岸七ツ岩
2 船舶の要目
船種船名 漁船種吉丸
総トン数 9.70トン
全長 16.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120
3 事実の経過
種吉丸は、まぐろはえなわ漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人及び同人の実父であるB指定海難関係人ほか1人が乗り組み、船首0.5メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成10年5月26日08時00分宮崎県油津漁港を発し、15時00分同県都井岬南東方37海里付近の漁場に至って漂泊したのち、翌27日04時30分操業を開始し、北東方に移動しながら操業を行った。
ところで、B指定海難関係人は、昭和50年5月に一級小型船舶操縦士(5トン限定)の海技免状を取得したのち、5トン未満の漁船に船長として長年乗り組んで操業に従事していたところ、長男であるA受審人が海技免状を取得したことから、種吉丸を購入したのち同人に船長職を執らせ、自らは甲板員として乗り組んでいたものの、実質の船長職を執って一切の運航の指揮に当たり、港と漁場の往復や操業中の船橋当直をほとんど1人で行っていた。

また、本船の操業は、約3時間かけて投縄したのち、約4時間漂泊して休息し、約12時間かけて揚縄を行い、その後次の投縄までの約4時間は漂泊して休息を取ったり、漁場を移動したりして、これを繰り返すものであった。
こうして、種吉丸は、翌28日21時00分都井岬灯台から113度(真方位、以下同じ。)29.7海里の地点で2回目の揚縄を終えたとき、まぐろなど32本の漁獲を得て大漁で、魚冷蔵用の氷が無くなったことから、同時刻、同地点を発して帰途についた。
B指定海難関係人は、単独で船橋当直に当たり、GPSプロッターを見て、宮崎県築島付近に向かうこととし、発進直後、遠隔及び自動操舵と機関を操作できる遠隔管制器(以下「遠隔管制器」という。)で針路を306度に定めて自動操舵にセットし、機関を回転数毎分1,000の微速力前進にかけ、4.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で進行し、食事を終えた21時30分機関を回転数毎分1,500の全速力前進に上げて6.4ノットの速力で続航した。

A受審人は、B指定海難関係人から食事を終えた後休息するように言われ、これまで同指定海難関係人が船橋当直中に疲れて眠気を催したときにはいつも起こされて交代していたことから、降橋して船員室で休息した。
B指定海難関係人は、操舵室右舷側のカーペット敷きの床に船首を向き、足を投げ出して座り、遠隔管制器を右の腰から20センチメートルばかり離れた横のカーペット上に置き、時折姿勢を崩して手をカーペットに付いたり足を左右に動かしたりしながら見張りに当たって進行した。
遠隔管制器は、ユニカス工業株式会社製のRE−15VEと称する、縦233ミリメートル(以下「ミリ」という。)横60ミリ高さ69ミリのボックスタイプのもので、上面には上部から順に長さ約20ミリ太さ約6ミリの自動操舵・遠隔操舵切替スイッチ(以下「切替スイッチ」という。)、ダイヤル式の操舵用ツマミ、ダイヤル式のガバナー用ツマミ及びダイヤル式のクラッチ用ツマミが付いており、ボックス下部からケーブルによって駆動ユニットに接続されていた。

こうして、B指定海難関係人は、原針路の306度で自動操舵としたまま、原速力で、カーペットの上に座って当直に当たって続航し、23時ごろ切替スイッチにより遠隔操舵として他船を避航したのち、GPSプロッターを見て、原針路に復して再び自動操舵にセットして進行するうち、操業による疲れから23時54分ごろ眠気を催すようになったが、休息中のA受審人に報告して交代するなど、居眠り運航の防止措置をとらないまま続航し、翌29日00時04分ごろ居眠りを始めた。
B指定海難関係人は、やがて居眠りに陥り、その後右手が切替スイッチに触れ、左側の自動操舵側に倒してあった切替スイッチを右側の遠隔操舵側に倒したことから、舵がほぼ中央のまま遠隔操舵に切り替わって、306度の針路が保たれないまま進行することとなり、折からの風潮流によって徐々に左方に圧流され始め、宮崎県串間市大納海岸七ツ岩付近に向かう態勢となっていたけれども、これに気付くことができないまま進行中、02時00分都井岬灯台から017度3.4海里の地点において、船首を283度に向けて、原速力のまま乗り揚げた。

当時、天候は晴で風力4の北東風が吹き、潮候はほぼ低潮時であった。
A受審人は、衝撃を感じて目覚め、B指定海難関係人と共に事後の措置に当たった。
乗揚の結果、船体が大破し、のち焼却処分され、全損となった。


(原因)
本件乗揚は、夜間、宮崎県都井岬東方沖合の漁場から同県築島付近に向かう針路として帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同県串間市大納海岸七ツ岩付近に向首する進路のまま進行したことによって発生したものである。


(受審人等の所為)
B指定海難関係人が、夜間、単独で船橋当直に当たり、宮崎県都井岬東方沖合の漁場から同県築島付近に向かう針路として帰航中、眠気を催した際、A受審人に報告して交代するなど、居眠り運航の防止措置をとらなかったことは、本件発生の原因となる。
B指定海難関係人に対しては、事後A受審人と話し合って船橋当直を輪番制で行うこととした点に徴し、勧告しない。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。


よって主文のとおり裁決する。






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