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2000年(平成12年)

平成11年広審第115号
    件名
漁船漁栄丸貨物船セレンガ衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年9月7日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

中谷啓二、釜谷獎一、内山欽郎
    理事官
岩渕三穂

    受審人
A 職名:漁栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
セレンガ・・・ほとんど損傷なし
漁栄丸・・・・右舷船首部を大破、転覆、のち廃船、船長が、顔面挫創、右足打撲傷

    原因
セレンガ・・・各種船間の航法(避航動作)不遵守(主因)
漁栄丸・・・・見張り不十分、警告信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、セレンガが、漁ろうに従事している漁栄丸を避けなかったことによって発生したが、漁栄丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年12月29日08時20分
瀬戸内海 播磨灘西部
2 船舶の要目
船種船名 漁船漁栄丸 貨物船セレンガ
総トン数 4.9トン 3,086トン
登録長 11.42メートル 94.5メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 2,130キロワット
漁船法馬力数 15
3 事実の経過
漁栄丸は、小型機船底引網漁業に従事する、中央部に操舵室を備えたFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、船首0.2メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、10数隻の僚船と共に、平成10年12月29日04時30分兵庫県坊勢漁港を発し、05時10分ごろ播磨灘西部の家島諸島南方沖に至り操業を開始した。
ところで、漁栄丸の操業は、えび、かに、したびらめなどの漁獲を目的とし、マンガと称される、下部に海底を掻くための爪を備えたロの字型の鉄製枠に、長さ約6メートルの袋網の網口を取り付け、これを水深10メートルから40メートルの付近で、船尾から300メートルほど繰り出したワイヤロープにより約30分間引いたのち、5分ほどかけて揚網と漁獲物の取り込みを行うというものであったが、操業中の動きは一定しておらず、えい網時は潮流方向とは無関係に約4.5ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で進行し、揚網と漁獲物の取り込み作業を、マンガの引き揚げや袋網の汚れ落としなどのため若干移動はするもののほぼ停留して行い、同作業が終わり次第えい網準備のため、網、マンガを海中に投入し、1分少しの間、ワイヤロープを延出しながら約7ノットの速力で進行するということを繰り返していた。
これら一連の作業からなる操業模様からして、動力船が漁栄丸に近づく際は、同船が停留中であっても十分な間隔を保っておかないと衝突するおそれがあり得、早期に、十分に距離をとり同船を避けることが要求される状況となっていた。
A受審人は、播磨灘を南下しつつ操業を続け、07時50分ごろ播磨灘航路第2号灯浮標の北西方2海里ばかりの地点で、漁ろうに従事していることを示す形象物を掲げて南方に向けえい網を開始し、08時15分ごろ播磨灘推薦航路近くでえい網を終え、専ら付近にいた僚船の動きに注意を払いながら揚網を行い、同時17分半大角鼻灯台から101度(真方位、以下同じ。)3.4海里の地点で、機関を中立にして230度に向首し、ほぼ停留した状態で、船尾甲板のやぐらに網を吊り上げて漁獲物の取り込みにかかった。

08時18分少し前A受審人は、左舷船尾12度800メートルのところに、セレンガを視認できる状況で、その後同船が自船と十分な間隔を保たない態勢で接近し、そのまま操業を続行すると衝突するおそれがあり得たが、漁獲物の取り込みに没頭して周囲の見張りを十分に行っていなかったので同船に気付かず、警告信号を行わず、同時19分半漁獲物の取り込みを終えたとき、引き続いてのえい網準備作業をセレンガが航過するまでいったん中止するなど衝突を避けるための措置をとらず、直ちに機関を半速力前進にかけて反転し、針路を023度として自動操舵とし、網とマンガを海中に投入して7.0ノットの速力で進行し、船尾甲板でワイヤロープの延出を始めた。
08時20分わずか前A受審人は、漁獲物を水槽に入れようと前部甲板に向かったとき、右舷船首方至近に迫ったセレンガに初めて気付き、急ぎ微速力に減じたが効なく、漁栄丸は、08時20分大角鼻灯台から100度3.4海里の地点において、原針路、原速力のまま、その右舷船首部にセレンガの船首が前方から44度の角度で衝突した。

当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候はほぼ高潮時であった。
また、セレンガは、船尾船橋型貨物船で、船長B(以下「B船長」という。)、三等航海士C(以下「C三航士」という。)ほか26人が乗り組み、スクラップ鋼3,092キロトンを積載し、船首6.0メートル船尾6.5メートルの喫水をもって、同月26日16時40分塩釜港仙台区を発し、瀬戸内海経由で大韓民国馬山港に向かった。
越えて29日07時C三航士は、播磨灘を西進中、操舵手と共に船橋当直に就き、08時00分大角鼻灯台から084度6.3海里の地点で、針路を播磨灘推薦航路に沿って247度に定め、機関を半速力前進にかけ、9.5ノットの速力で、手動操舵により進行した。
08時18分少し前C三航士は、右舷側方に数隻の漁船を認めながら、大角鼻灯台から097度3.75海里の地点に達したとき、左舷船首5度800メートルのところに、漁ろうに従事して停留中の漁栄丸を初認し、そのまま進行すると同船と十分な間隔を保たず約70メートルまで接近し、衝突するおそれがあり得る状況であったが、直ちに大きく左転するなどして漁ろうに従事中の同船を避けずに続航した。

08時20分少し前C三航士は、漁栄丸が移動して前路に近づくことに気付き、衝突の危険を感じて機関を停止し、続いて右舵一杯をとったが効なく、セレンガは、原針路、原速力のまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、セレンガにほとんど損傷はなかったが、漁栄丸は、右舷船首部を大破して転覆し、のち廃船となり、A受審人が、顔面挫創、右足打撲傷などを負った。


(原因)
本件衝突は、播磨灘西部において、西進中のセレンガが、漁ろうに従事している漁栄丸を避けなかったことによって発生したが、漁栄丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、えい網準備作業を中止するなど衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、播磨灘西部において、漁ろうに従事している場合、自船に接近するセレンガを見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、漁獲物の取り込みに没頭し、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、十分な間隔を保たない態勢で接近するセレンガに気付かず、警告信号を行わず、えい網準備作業をセレンガが航過するまでいったん中止するなど衝突を避けるための措置をとらずに衝突を招き、漁栄丸の右舷船首部を大破し転覆を生じさせ、自身も、顔面挫創、右足打撲傷などを負うに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






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