日本財団 図書館




2000年(平成12年)

平成11年神審第15号
    件名
プレジャーボート幸丸プレジャーボート功生丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年7月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

黒岩貢、須貝壽榮、西林眞
    理事官
野村昌志

    受審人
A 職名:幸丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:功生丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
幸丸・・・左舷船首部に亀裂及び破口を伴う損傷
功生丸・・・左舷船首部及び同船尾部に亀裂及び破口を伴う損傷、同乗者が、頭部挫滅で死亡

    原因
幸丸・・・法定灯火表示不適切、見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守
功生丸・・・法定灯火不表示、動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守

    二審請求者
受審人A

    主文
本件衝突は、幸丸が、法定灯火の表示が適切でなかったばかりか、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、功生丸が、法定灯火を表示しなかったばかりか、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。
受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
受審人Bの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年7月21日21時10分
徳島県徳島小松島港
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート幸丸 プレジャーボート功生丸
全長 9.95メートル 8.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 77キロワット 128キロワット
3 事実の経過
幸丸は、船体中央部に機関室を、その後方に操舵室を配置し、船尾甲板上の操舵室の屋根より少し高い位置にオーニングを展張したFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人1人を乗せ、花火見物の目的で、船首0.5メートル船尾0.7メートルの喫水をもって、平成9年7月21日20時45分徳島県徳島小松島港徳島区吉野川大橋付近の係留地を発し、法定灯火に加え、黄色回転灯を点灯して同港小松島区に向かった。
ところで、幸丸の白色全周灯は、オーニング後端上部の船体中心線上に取り付けられていたが、その前方8センチメートル(以下「センチ」という。)離れた位置にほぼ同じ高さで黄色回転灯が設置されていたため、夜間、他船から幸丸の白色全周灯を見ようとすると、黄色回転灯のみが見えたり、白色と黄色が混濁したような光に見えるなど、直ちに船舶のマスト灯又は白色全周灯とは判断しにくい状態となっていた。また、両色灯は、機関室囲壁前端上部に設置され、その停止状態における水面上の高さは、船首端のそれとほぼ同じ高さとなり、さらに、速力が14ノット前後となると停止状態よりも船首が約30センチ浮上し、操舵室から船首方の見通しには問題なかったものの、夜間、船首方から来航する他船は、両色灯が見えにくいなど、幸丸の法定灯火は、適切に表示されていなかった。
一方、A受審人は、大型のGPSプロッターを操舵室内左舷側上部にやや右舷側を向けて設置しており、同人の眼高とほぼ同じ高さとなるその表示器の明かりが操舵室内に漏れて前面の窓ガラスに反射していたため、当時、月明かりで周囲は明るく遠くまで見通せたが、同室内からは周囲の見通しが悪く、見張りがしにくい状況となっていたことに気付いていなかった。
発航後A受審人は、友人を自らの左側に立たせ、操舵操船に当たって吉野川を下り、吉野川口灯浮標約1海里手前から右転を始め、21時06分徳島津田外防波堤東灯台(以下「外防波堤東灯台」という。)から018度(真方位、以下同じ。)1.3海里の地点に達したとき、針路を180度に定め、機関を回転数毎分3,000にかけ、16.5ノットの対地速力とし手動操舵により、やや船首を上下左右に振りながら進行した。

21時08分半A受審人は、外防波堤東灯台から037度1,270メートルの地点に達したとき、右舷船首7度1,400メートルのところに第三船の白、紅2灯とともに、よく注意して見張りをしていれば、同船の手前100メートルに時々見え隠れする功生丸の紅灯を認めることができ、その後同船と衝突のおそれのある態勢で接近する状況となった。
しかし、A受審人は、前述のように操舵室からの見通しが悪くなっていることを知らず、時々操舵室の外に顔を出すなどして見張りを十分に行わなかったことから、功生丸の接近に気付かず、右転するなど衝突を避けるための措置をとらないまま進行した。
21時09分A受審人は、外防波堤東灯台から045度1,100メートルの地点に達したとき、徳島第1号灯浮標及び同第2号灯浮標が近くに見えたことから、機関を回転数毎分2,700に減じて14.0ノットの対地速力とし、その後右舷側に広がる同港徳島区の方を見ていたため、方位の変化なく860メートルに接近した功生丸の紅灯にも、後続する第三船の灯火にも気付かないで続航中、21時10分幸丸は、外防波堤東灯台から066度880メートルの地点において、原針路、原速力のままその左舷船首部が、功生丸の左舷船首部に、前方から14度の角度で衝突した。

当時、天候は薄曇りで風力2の南南西風が吹き、潮候は下げ潮の初期にあたり、視界はよく月齢は16日で月出は19時55分であった。
また、功生丸は、船体中央部に機関室を、その後方に操舵室を配置したFRP製プレジャーボートで、B受審人が単独で乗り組み、同乗者2人を乗せ、花火見物の目的で、船首0.3メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、同日19時25分徳島小松島港徳島区吉野川大橋付近の係留地を発して同港小松島区に向かい、20時ごろ同区に到着して花火見物ののち、20時58分友人の所有する第三船とともに小松島港東防波堤灯台から247度150メートルの地点を発進し、両船とも法定灯火を点灯して帰途に就いた。
ところで、B受審人は、以前、海面に浮いていたビニール袋がプロペラに巻き付いたり、海水吸入口を塞いだりして機関を損傷させたことがあり、当日は月明かりで海面がよく見通せたことから、船首方間近の海面をよく見てそれらのゴミを避けながら航行することとし、白色全周灯が前部甲板に反射して海面を見えにくくしていたので、小松島高祖根灯標を左舷側に通過したころ、白色全周灯を消したまま両色灯のみとし、法定灯火を表示しないで航行した。

一方、功生丸の両色灯は、機関室囲壁前端部付近に立てた木製柱上部に設置され、その停止状態における水面上の高さは、船首端のそれとほぼ同じ高さとなり、さらに、速力が14ノット前後となると停止状態よりも船首が40センチ近く浮上し、操舵室から船首方の見通しには問題なかったものの、夜間、船首方から来航する他船は、両色灯が見えにくかったうえ、白色全周灯が点灯されていなかったことにより、時には無灯火に、時には見え隠れする両色灯を認め得る状況となっていたが、B受審人は、このことに気付いていなかった。
21時06分B受審人は、外防波堤東灯台から164度1,400メートルの地点に達したとき、針路を014度に定め、機関を回転数毎分2,000にかけ、14.0ノットの対地速力とし、時折船尾方100メートルを後続する第三船を振り返り、手動操舵によりやや船首を上下左右に振りながら進行した。

21時07分B受審人は、左舷船首7度1.5海里に幸丸の白色と黄色が混濁したような回転灯を初めて認め、まもなくこれを船舶の灯火と判断したものの、いちべつしただけで右方に移動しているように見えたことから、同灯火から目を離し、月明かりの中、船首至近海面の浮遊物に注意しながら続航した。
21時08分半B受審人は、同方位1,300メートルに幸丸の前示回転灯と、時々見え隠れする緑灯を認めることができ、その後衝突のおそれのある態勢で互いに接近する状況となったが、初認時、いちべつしただけで右方に移動しているものと思い、以後、同船に対する動静監視を行っていなかったので、このことに気付かず、右転するなど衝突を避けるための措置をとらないまま進行した。
21時10分少し前B受審人は、ふと顔を上げたとき、幸丸の白色全周灯と黄色回転灯及びその船体を左舷船首至近に認め、右舵一杯としたが及ばす、功生丸は、原針路、原速力のまま前示のとおり衝突した。

衝突の結果、幸丸は左舷船首部に、功生丸は左舷船首部及び同船尾部にそれぞれ亀裂及び破口を伴う損傷を生じたが、のち両船とも修理され、功生丸の同乗者C(昭和25年5月14日生)が、頭部挫滅で死亡した。

(原因)
本件衝突は、夜間、徳島小松島港徳島区において、幸丸が、法定灯火の表示が不適切であったばかりか、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、功生丸が、法定灯火を表示しなかったばかりか、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、徳島小松島港徳島区から同港小松島区へ航行する場合、右舷船首方から接近する功生丸を見落とさないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、操舵室内が明るく周囲の見張りがしにくい状況であるにもかかわらず、操舵室外に顔を出すなどして周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、接近する功生丸に気付かないまま進行して同船との衝突を招き、自船の左舷船首部、功生丸の左舷船首部及び同船尾部にそれぞれ亀裂及び破口を伴う損傷を生じさせ、功生丸の同乗者を頭部挫滅により死亡させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

B受審人は、夜間、徳島小松島港小松島区から同港徳島区に帰港中、前路に幸丸の白色と黄色が混濁したような回転灯を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、いちべつしただけで右方に移動しているものと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、幸丸の接近に気付かないまま進行して同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせ、同乗者を死亡させるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION