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2000年(平成12年)

平成11年長審第78号
    件名
引船第五大永丸引船列導流堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年6月8日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

森田秀彦、亀井龍雄、河本和夫
    理事官
喜多保

    受審人
A 職名:第五大永丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
B 職名:第五大永丸甲板員 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
若月・・・左舷船首に大破口

    原因
船位確認不十分

    主文
本件衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年5月27日21時45分
長崎県平戸瀬戸
2 船舶の要目
船種船名 引船第五大永丸 台船若月
総トン数 72トン 1,767トン
全長 27.00メートル 65.00メートル
幅 6.50メートル 22.00メートル
深さ 3.00メートル 3.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 588キロワット
3 事実の経過
第五大永丸(以下「大永丸」という。)は、航行区域を沿海区域(韓国との国際航海)とする鋼製引船で、A受審人及びB受審人ほか2人が乗り組み、船首2.0メートル船尾2.8メートルの喫水をもって、平成10年5月27日15時30分長崎港を発し、途中長崎県高島港沖合において、船首尾とも0.55メートルの等喫水の、空船で無人の台船若月を受け取り、径85ミリメートルのナイロンの曳航索でもって船尾に引き、大永丸の船尾から若月の後端までの距離が165メートルの引船列として16時20分同港沖合を発航し、同県平戸瀬戸経由で関門港に向かった。

A受審人は、船橋当直を自らとB受審人及び甲板員による単独3時間交替の3直制とし、高島港沖合発航に引き続き単独で船橋当直に当たり、大永丸には法定の灯火を、若月には両舷に4個ずつ持ち運び式点滅灯をそれぞれ点灯して九州西岸沿いに北上した。
18時00分A受審人は、次直の甲板員と船橋当直を交替する際、潮汐表によって3時間後には平戸瀬戸の潮流が最強になることを知ったが、21時からの当直者であるB受審人が曳航の経験が豊富なので同瀬戸の通航を同人1人に任せても大丈夫と思い、同瀬戸においては自ら昇橋して操船の指揮を執ることを航海計画に入れなかった。
20時40分B受審人は、平戸音無瀬灯浮標北東沖合で甲板員と交替して単独で船橋当直に就き、21時41分南風埼灯台から241度(真方位、以下同じ。)150メートルの地点において、広瀬導流堤の西側水道を航行することとし、広瀬導流堤灯台の西側に向くよう針路を359度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの北流に乗じて10.5ノットの対地速力で手動操舵によって進行した。

21時43分B受審人は、広瀬導流堤灯台から191度480メートルの地点に達したとき、自船の前路に著しく接近する態勢で南下する他船の白、白、紅3灯を広瀬の北方に視認し、同船を避けて広瀬導流堤の東側水道に向けて転針することとしたが、レーダーによって同導流堤先端部との相対位置関係を測定するなど船位の確認を行っていなかったので、同導流堤先端部まで距離に余裕がなく、大角度の舵角で回頭を始めないと若月が同導流堤先端部を替わり切れない状況であったが、このことに気付かなかった。
21時44分B受審人は、目測で同導流堤までまだ距離に十分余裕があるものと思い、広瀬導流堤灯台から208度200メートルの地点で、大角度の舵角によることなく、右舵約10度をとって転針を始めた。
B受審人は、他船とは左舷を対して無難に航過し、大永丸も広瀬導流堤の南西端を替わすことはできたが、若月が次第に同導流堤に接近するのを認め、21時44分半衝突の危険を感じて右舵一杯にとり、機関を極微速力に減じ、大永丸を鴨瀬灯浮標に向く105度の針路で若月を曳航したが、及ばず、21時45分若月は、070度を向き、9.0ノットの速力となったとき、その左舷船首が広瀬導流堤先端部と衝突した。

当時、天候は晴で風力1の北西風が吹き、潮候は上げ潮の初期で、付近には約3ノットの北流があった。
A受審人は、自室で休息中、衝突した旨の報告を受け、急ぎ昇橋して事後の措置に当たった。
衝突の結果、若月は左舷船首に大破口を生じたが、のち修理された。


(原因)
本件衝突は、夜間、平戸瀬戸を北上中、前路に認めた他船を避けて広瀬導流堤の東側水道に向けて転針する際、船位の確認が不十分で、大角度の舵角によって転針を行わなかったことによって発生したものである。
運航が適切でなかったのは、船長が自ら操船の指揮を執らなかったことと、当直者が船位の確認を行わなかったこととによるものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、平戸瀬戸を台船を引いて航行する場合、自ら操船の指揮を執るべき注意義務があった。しかるに、同人は、当直者が曳航の経験が豊富なので同瀬戸の通航を同人1人に任せても大丈夫と思い、自ら操船の指揮を執らなかった職務上の過失により、広瀬導流堤と台船との衝突を招き、台船に破口を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、夜間、平戸瀬戸を北上中、前路に認めた他船を避けて広瀬導流堤の東側水道に向けて転針する場合、レーダーによって同導流堤先端部との相対位置関係を測定するなど船位の確認を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は同導流堤まで目測でまだ距離に十分余裕があるものと思い、船位の確認を行わなかった職務上の過失により、大角度の舵角による転針を行わず、台船と導流堤との衝突を招き前示の損傷を生じさせるに至った。

以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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