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2000年(平成12年)

平成12年仙審第3号
    件名
遊漁船もと丸防波堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年6月28日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

長谷川峯清、根岸秀幸、藤江哲三
    理事官
保田稔

    受審人
A 職名:もと丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
西防波堤・・・擦過傷
もと丸・・・・船首部を圧壊、また、釣客1人が頸椎脱臼骨折による頸髄損傷で死亡、釣客2人が全治それぞれ約1箇月の骨折及び2人が約1週間の打撲等

    原因
居眠り運航防止措置十分

    主文
本件防波堤衝突は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年6月27日12時24分
新潟港東区
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船もと丸
総トン数 11トン
全長 14.24メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 394キロワット
3 事実の経過
もと丸は、船体中央の操舵室の前後に旅客室を有するFRP製遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、釣客Bほか10人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.3メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、平成11年6月27日02時30分新潟港東区の定係地を発し、新潟県佐渡島弾埼北東方沖合約4海里の釣場に向かい、05時00分同釣場に到着してめばる底釣り(以下「底釣り」という。)を行ったのち、10時00分弾埼灯台から045度(真方位、以下同じ。)3.8海里の地点を発進して帰途に就いた。
ところで、A受審人は、毎年3月から7月の間に前示釣場で日出前から正午ごろにかけて底釣り及び6月から11月の間に新潟港の沖合約3海里の釣場で日没後から夜中にかけてあじ夜釣り(以下「夜釣り」という。)の各遊漁に、釣客を乗せて年間130日ばかり出漁していた。同人は、底釣り中には操舵室で潮昇りや釣糸が真っ直ぐになるように船首を潮に立てる操船を行うなどのほか、釣客の安全を確保するため出漁中には休息をとることができにくい状況で、底釣りと夜釣りの漁期が重複する時期に連続出漁すると、休息が断続的で短時間になり、蓄積する疲労を回復したり睡眠不足を解消する十分な時間が得られないことを知っていた。

前々日25日の夜釣り、前日26日の底釣り及び夜釣りに引き続き連続出漁していたA受審人は、発進後、操舵室の窓や扉を閉め切り、同室中央の舵輪後部に固定したいすに腰掛けて操船に当たり、釣客を旅客室内で休息させ、新潟港東区西防波堤(以下「西防波堤」という。)に接近してから同防波堤を替わして港口に向かうつもりで、10時30分弾埼灯台から084度6.0海里の地点で、針路を125度に定め、機関を全速力前進にかけ、18.0ノットの対地速力で、約2海里先航する同業種船(以下「僚船」という。)と無線交信しながら、自動操舵によって進行した。
12時04分A受審人は、阿賀野川沖石油掘削塔(以下「掘削塔」という。)灯から037度1.5海里の地点に差し掛かり、掘削塔にほぼ並航したことを認めたとき、あと20分ばかりで西防波堤に至ることを知り、連続出漁による疲労の蓄積と睡眠不足を感じていたものの、僚船との無線交信を続けることで気を紛らわせながら続航した。

12時14分A受審人は、新潟港東区西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から299度3.0海里の地点に達したとき、僚船が入港態勢に入ったことから、発進後2時間近く続けていた同船との無線交信を打ち切り、静かになったことで急に眠気を催したが、もう港口が近いので、居眠りに陥ることはあるまいと思い、いすから立ち上がり、窓や扉を開けて外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとることなく、いすに腰掛けたまま同じ針路、速力で進行するうち、やがて居眠りに陥った。
こうして、もと丸は、A受審人が居眠りに陥っていて前路の見張りが行われず、西防波堤に向首して続航中、12時24分西防波堤灯台から208度570メートルの地点において、原針路、原速力のまま、船首が同防波堤に衝突した。
当時、天候は雨で風力2の東北東風が吹き、潮侯はほぼ高潮時であった。

A受審人は、衝突の衝撃で目覚め、事後の措置に当たった。
防波堤衝突の結果、西防波堤は擦過傷を生じただけで、もと丸は船首部を圧壊したが、のち修理された。また、衝突の衝撃で跳ね飛ばされたB釣客(昭和26年3月2日生)が頸椎脱臼骨折による頸髄損傷で死亡、釣客の2人が全治それぞれ約1箇月の骨折及び2人が約1週間の打撲等を負った。


(原因)
本件防波堤衝突は、佐渡島弾埼北東方沖合の釣場から新潟港東区の定係地に向けて帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、西防波堤に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、単独の船橋当直に就いていすに腰掛け、佐渡島弾埼北東方沖合の釣場から新潟港東区の定係地に向けて帰航中、同港港口に近づいて眠気を催した場合、居眠り運航にならないよう、いすから立ち上がり、窓や扉を開けて外気に当たるなど居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。ところが、同人は、もう港口が近いので、居眠りに陥ることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、いすに腰掛けたまま進行するうち居眠りに陥り、西防波堤に向首進行して衝突を招き、同防波堤に擦過傷及びもと丸の船首部に圧壊を生じさせるとともに、釣客の1人を死亡及び4人を負傷させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。


よって主文のとおり裁決する。






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