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2000年(平成12年)

平成12年函審第7号
    件名
漁船第七十八操洋丸漁船第七十三日東丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年6月7日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

大石義朗、酒井直樹、織戸孝治
    理事官
東晴二

    受審人
A 職名:第七十八操洋丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:第七十三日東丸一等航海士兼漁労長 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
操洋丸・・・右舷側後部外板に亀裂を伴う凹損、右舷側中央部外板に凹損及び擦過傷、機関室内の機器類に濡れ損
日東丸・・・右舷船首部外板及びブルワークに亀裂を伴う凹損並びに右舷船尾部外板に凹損

    原因
日東丸・・・動静監視不十分、各種船間の航法(衝突回避措置)不遵守
操洋丸・・・見張り不十分、警告信号不履行

    主文
本件衝突は、両船が漁ろうに従事中、第七十三日東丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、第七十八操洋丸が、見張り不十分で、警告信号を行わなかったこととによって発生したものである。
受審人Bを戒告する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年12月23日13時30分
北海道礼文島北方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第七十八操洋丸 漁船第七十三日東丸
総トン数 124.38トン 124.34トン
全長 37.80メートル 38.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 753キロワット 753キロワット
3 事実の経過
第七十八操洋丸(以下「操洋丸」という。)は、かけ回し式沖合底びき網漁業に従事する推進器として可変ピッチプロペラ1個を備え、前部船橋二層甲板型の鋼製漁船で、A受審人ほか16人が乗り組み、操業の目的で、船首1.8メートル船尾4.0メートルの喫水をもって、平成10年12月23日00時00分北海道稚内港を発し、同日04時半ごろ礼文島の北方20海里ばかりの漁場に至り、操業を開始した。
12時25分A受審人は、前示漁場に点在している他船はみな同業船であったことから、漁ろうに従事していることを示す形象物を掲げないまま、4回のかけ回しですけとうだら約40トンを獲たのち、漁労長を魚群探索に当たらせ、魚群を探索したので5回目のかけ回しを行うこととし、操舵室において、手動操舵と見張りに当たり、漁労長を操業の指揮及びトロールウインチの遠隔操作に当たらせ、同時26分機関を回転数毎分710にかけ、翼角を前進16度の全速力として投樽地点向け進行した。

12時31分A受審人は、海驢(えど)島灯台から004度(真方位、以下同じ。)19.9海里の水深650メートルばかりの地点に達したとき右舷側の引き綱の先端を連結した浮標の樽を投下し、針路を146度に定め、引き綱を延出しながら10.5ノットの対地速力で進行し、引き綱を2,000メートル延出したとき8点ばかり右転し、残り400メートルの引き綱を入れ終わり、機関を回転数毎分670とし、翼角を極微速力の1度に下げ、右舷側引き綱の後端に連結した底びき網を樽から180度2,000メートルばかりの地点に投網したのち2点ばかり右転し、再び機関を回転数毎分710にかけ、翼角を前進16度とし、左舷側の引き綱を400メートル延出したのち8点ばかり右転し、残りの引き綱を延出しながら浮標の樽に向かい、12時49分前示樽に戻り、翼角を0度として停止し、これを揚収した。
12時50分A受審人は、揚樽地点において針路を000度に定め、翼角を前進11度の半速力とし、3.0ノットの前進対地速力で曳網を開始し、13時05分曳網を終え、トロールウインチで引き綱の巻き取りをしながら1.5ノットの対地速力となって前進し、同時15分半引き綱を約600メートル巻き取ったとき、船首を000度に保ったまま、翼角を少しずつ下げて3.5ノットの対地速力で引き綱の巻き取りを続けながら後進した。

13時25分A受審人は、引き綱の巻き取りを続けながら後進中、右舷船首10度1,720メートルのところで第七十三日東丸(以下「日東丸」という。)が樽を投下し、引き綱を延出しながら自船に向かって進行し始めたことを視認できる状況であったが、引き綱が残り200メートルばかりとなり、揚網に取り掛かる時機であったことから、船尾方を向いて網が推進器に絡まないよう、速力を調整することに気を取られ、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、同時27分日東丸が右舷船首8度1,250メートルに接近したとき、網が近づいたので後進を止めるため翼角を前進13度に上げ、3.5ノットの対地速力とし、その後同船と衝突のおそれがある態勢で接近したが、依然、速力の調整に気を取られ、船尾方を向いたまま前方の見張りを行わなかったので、同船に気付かず、警告信号を行わなかった。
13時29分半A受審人は、いつもより引き綱を船尾まで巻き取り過ぎたので、引き綱を少し延出するため翼角を後進2度とし、1ノットばかりの前進行きあしとなったころ、同時30分少し前業務を終えて無線室から昇橋した通信長の大声で船首方に向き、間近に迫った日東丸を初めて認め、直ちに無線電話で同船に衝突の危険がある旨を連絡したが間に合わず、13時30分海驢島灯台から004度20.4海里の地点において、000度を向いた操洋丸の右舷側後部に、日東丸の右舷船首部が前方から10度の角度で衝突し、更に操洋丸の右舷側中央部に日東丸の右舷側船尾部が衝突した。
当時、天候は、曇で風力3の北西風が吹き、視界は良好であった。
また、日東丸は、かけ回し式沖合底びき網漁業に従事する推進器として可変ピッチプロペラ1個を備え、前部船橋二層甲板型の鋼製漁船で、B受審人ほか15人が乗り組み、操業の目的で、船首1.8メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、同日01時30分稚内港を発し、礼文島北方の通称NW場漁場に至り、操業を開始した。

B受審人は、前示漁場に点在している他船はみな同業船であったことから、漁ろうに従事していることを示す形象物を掲げないまま、4回のかけ回しですけとうだら約20トンを獲たのち、魚群探索を行いながら北上し、魚群を探索したので13時23分5回目のかけ回しを左回りで行うこととし、操舵室において操船の指揮に当たり、このころ船長が、漁労甲板後部で前回に揚網した底びき網の整理に当たり、通信長が、操舵室において調子が悪くなった魚群探知器の調整に当たった。
B受審人は、13時24分機関を回転数毎分710にかけて投樽態勢に入り、同時25分海驢島灯台から004度21.3海里の地点に達したとき樽を投下し、針路を190度に定めて翼角を前進16度とし、10.5ノットの対地速力で、引き綱を延出しなが自動操舵により進行した。
樽を投下したとき、B受審人は、ほぼ正船首1,720メートルに北方を向首して引き綱を巻き取りながら後進している操洋丸を認めたが、同船と接近するまでに引き綱に付けてある左転の時機を示す目印が見えてくるものと思い、船尾方を向いて前示目印を認めることに注意を払い、続航した。

13時27分B受審人は、操洋丸が左舷船首2度1,250メートルに接近したとき、引き綱の巻き取りを続けながら3.5ノットの対地速力で前進し始めたため、その後同船と衝突のおそれがある態勢で接近したが、依然、船尾方を向いていて、同船に対する動静監視を行わなかったので、このことに気付かず、速やかに左転するなどの衝突を避けるための措置をとることなく進行中、同時30分わずか前突然無線電話に入った同船船長の危険を知らせる叫び声を聞いて後方を振り返ったとき、船首至近に迫った同船を認め、自動操舵装置の針路設定つまみを左に一杯回したが効なく、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
船長は、漁労甲板後部で前回に揚網した底びき網の整理中、衝撃を感じて衝突した操洋丸を認め、急ぎ昇橋して事後の措置に当たった。
衝突の結果、操洋丸は、右舷側後部外板に亀裂を伴う凹損を、右舷側中央部外板に凹損及び擦過傷を、浸水により機関室内の機器類に濡れ損を生じ、日東丸は、右舷船首部外板及びブルワークに亀裂を伴う凹損並びに右舷船尾部外板に凹損を生じたが、のちいずれも修理された。


(原因)
本件衝突は、北海道礼文島北方沖合の漁場において、両船がかけ回しにより漁ろうに従事中、投下した樽の引き綱を延出しながら進行中の日東丸と、わずかな前進速力で曳網中の操洋丸とが衝突のおそれのある態勢で接近した際、日東丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、操洋丸が、見張り不十分で、警告信号を行わなかったこととによって発生したものである。


(受審人の所為)
B受審人は、北海道礼文島北方沖合の漁場において、かけ回しにより漁ろうに従事中、樽の引き綱を延出しながら進行する場合、ほぼ正船首方に引き綱を巻き取りながら低速力で後進中の操洋丸の存在を知っていたのであるから、同船との衝突のおそれの有無を判断できるよう、同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同船と接近するまでに引き綱に付けてある左転の時機を示す目印が見えてくるものと思い、前示目印を認めることに注意を払い、船尾方を向いていて、同船に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、その後同船と衝突のおそれがある態勢で接近したが、このことに気付かず、速やかに左転するなどの衝突を避けるための措置をとることなく進行して同船との衝突を招き、同船の右舷側後部外板に亀裂を伴う凹損、右舷側中央部外板に凹損及び擦過傷、浸水により機関室内の機器類に濡れ損、日東丸の右舷船首部外板及びブルワークに亀裂を伴う凹損、右舷船尾部外板に凹損をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は、北海道礼文島北方沖合の漁場において、かけ回しにより漁ろうに従事する場合、接近する日東丸を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、間もなく揚網に取り掛かる時機であったことから、船尾方を向いて網が推進器に絡まないよう速力の調整に気を取られ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれがある態勢で接近する同船に気付かず、警告信号を行わず、同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。

以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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