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2000年(平成12年)

平成12年函審第9号
    件名
貨物船第八きよう丸防波堤衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年4月20日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

酒井直樹
    理事官
堀川康基

    受審人
A 職名:第八きよう丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
球状船首及び船首部船底外板に亀裂を伴う凹損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件防波堤衝突は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年7月29日03時20分
北海道石狩湾港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第八きよう丸
総トン数 494トン
全長 63.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第八きよう丸(以下「きよう丸」という。)は、主として北海道天塩港から北海道石狩湾港及び小樽港などに山砂を輸送している砂利採取運搬船で、A受審人ほか4人が乗り組み、平成11年7月28日14時15分天塩港新港岸壁に着岸し、山砂1,350トンを載せ、船首3.20メートル船尾4.90メートルの喫水をもって、15時30分同岸壁を発し、北海道石狩湾港に向かった。
発航後A受審人は、操船に当たって天塩港防波堤入口を通過したのち同港沖合のほたて貝養殖施設の北側を西行し、同日16時05分同港の西方5海里ばかりのところで同港南方の羽幌港沖合に向け転針して機関を全速力前進に増速し、一等航海士に船橋当直を任せて降橋した。

A受審人は、同日21時00分留萌港の北西方15海里ばかりの地点で再び昇橋し、一等航海士から当直を引き継いで単独船橋当直に就き、雄冬岬の西方6海里ばかりのところに向け南下したのち石狩湾に入航し、翌29日02時20分石狩湾港北防波堤北灯台から348度(真方位、以下同じ。)8.6海里の地点に達したとき、針路を同灯台の少し東方に向く173度に定め、機関を全速力前進にかけ、9.5ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
ところで、きよう丸の天塩港と石狩湾港との間の航海は、両港における1時間余りの積揚荷役時間を加えて1往復が約24時間の短距離航海で、同月26日03時ごろから夜間荷役による両港間の航海が連続していた。
A受審人は、航海中の船橋当直を同人と一等航海士の2人による5時間交替の単独当直としており、天塩港では航海当直に引き続いて入港操船に当たり、発航後は同港沖合のほたて貝養殖施設が十分かわるまで操船に当たり、降橋して身の回りの整理を行い18時半ごろ夕食を済ませたのち、昇橋して19時ごろまで一等航海士の食事交替当直に就き、その後自室で休息したが寝付かれないまま21時の当直引継ぎまで2時間足らずの休息をとっただけで、疲労が蓄積し、睡眠不足の状態となっていた。

定針後A受審人は、前路に航行の妨げとなる船舶を認めなかったことから操舵室前面左舷側のレーダーの後方に背もたれ付きのいすを置いてこれに腰をかけたまま見張りに当たっていたところ、02時43分レーダーで石狩湾新港沖灯標が右舷前方2海里ばかりに接近したことを確認し、同灯標を右舷側に航過したとき操舵を手動に切り替えて石狩湾港防波堤入口に向け左転し、入港配置を令する予定として続航中、連続した短距離航海の船橋当直と出入港操船による蓄積した疲労と睡眠不足から次第に眠気を催し、時折強い睡魔におそわれるようになり、このまま続航すれば居眠り運航になるおそれがあった。しかし、同人は、前直の一等航海士から当直を引き継ぐ前に2時間ばかりの睡眠をとったので、居眠りすることはあるまいと思い、休息中の一等航海士を起こして2人で当直に就くなどの居眠り運航防止措置をとることなく、いすに腰をかけているうち、いつしか深い眠りに陥った。
こうして、きよう丸は、居眠り運航となり、02時54分石狩湾新港沖灯標を右舷側1.0海里に航過したが、予定していた転針が行われず、石狩湾港北防波堤の中央部付近に向首したまま進行中、03時20分石狩湾港北防波堤北灯台から210度2,280メートルの地点において、左舷船首が、原針路、全速力のまま石狩湾港北防波堤の中央部付近外側の消波ブロックに、後方から41度の角度で衝突した。
当時、天候は雨で風力2の北東風が吹き、潮候は上げ潮の末期で視界は良好であった。
衝突の結果、球状船首及び船首部船底外板に亀裂を伴う凹損を生じた。


(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、北海道雄冬岬西方沖合から北海道石狩湾港防波堤入口付近に向け石狩湾を南下中、居眠り運航の防止措置が不十分で、石狩湾港北防波堤の中央部付近に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、単独船橋当直に就いて北海道雄冬岬西方沖合から北海道石狩湾港防波堤入口付近に向け石狩湾を自動操舵により南下中、3日間連続した短距離航海の船橋当直と出入港操船による蓄積した疲労と睡眠不足から眠気を催した場合、休息中の一等航海士を起こして2人で当直に就くなどの居眠り運航防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、前直の一等航海士から当直を引き継ぐ前に2時間ばかりの睡眠をとったので、居眠りすることはあるまいと思い、休息中の一等航海士を起こして2人で当直に就くなどの居眠り運航防止措置をとらなかった職務上の過失により、いすに腰をかけたまま居眠りに陥り、石狩湾港北防波堤中央部付近に向首したまま進行して衝突を招き、きよう丸の球状船首及び船首部船底外板に亀裂を伴う凹損を生じさせるに至った。






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