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2000年(平成12年)

平成10年第二審第29号
    件名
貨物船フェリーあけぼの防波堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成12年3月23日

    審判庁区分
高等海難審判庁
原審門司

鈴木孝、米田裕、山崎重勝、吉澤和彦、上中拓治
    理事官
松井武

    受審人
A 職名:フェリーあけぼの船長 海技免状:一級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
あけぼの・・・右舷船首部外板に破口
北防波堤・・・南東端に一部損壊等

    原因
潮流に対する措置不十分

    二審請求者
受審人A

    主文
本件防波堤衝突は、潮流に対する措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年7月31日18時15分
鹿児島県鹿児島港第2区
2 船舶の要目
船種船名 貨物船フェリーあけぼの
総トン数 6,466トン
全長 141.5メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 13,239キロワット
3 事実の経過
フェリーあけぼの(以下「あけぼの」という。)は、船首尾にスラスターを備えた2軸1舵の船首船橋型貨客船兼自動車渡船で、鹿児島県鹿児島港から奄美群島の各港を経由して沖縄県那覇港に至る定期航路に就航していたところ、平成8年7月29日鹿児島港を発し、奄美大島の名瀬港、徳之島の亀徳港を経て沖之永良部島の和泊港に向かったが、沖縄諸島に接近した台風9号のため同港に入航できず、翌30日同船の運航を管理するR株式会社の運航管理者から、予定している運航を取り止めて名瀬港経由で発航地に帰航するよう指示された。

あけぼのは、19時30分名瀬港に寄港して往路の乗客と積荷を降ろし、代わりに鹿児島港向けの乗客と貨物を搭載して20時ごろ出航し、翌31日07時45分鹿児島港第2区の新港(以下「新港」という。)6号岸壁に着岸のうえ、乗客と積荷を降ろした後、同じ航路に就航する僚船を接岸させるためいったん沖出して待機することとし、A受審人ほか運航要員22人が乗り組み、09時45分同岸壁を離れた。
A受審人は、10時10分神瀬灯台から172度(真方位、以下同じ。)1.1海里の地点に投錨して仮泊し、その後同台風が台湾方面に遠ざかってその影響がなくなり、僚船が新港を発航することになったので、そのあとに着岸するため、入港部署を令して三等航海士をテレグラフ操作に、甲板手を手動操舵にそれぞれ就けて操船の指揮に当たり、船首4.80メートル船尾5.70メートルの喫水をもって、17時55分抜錨して新港の6号岸壁に向かった。

ところで、新港は、鹿児島湾が桜島によって最も狭められた同湾北西部の鹿児島本港南側に位置し、その港口が、いずれも先端に灯台が設置された鹿児島新港北防波堤と鹿児島新港南防波堤(以下「鹿児島新港」を冠する防波堤及び灯台名については冠称を省略する。)とによって東方に開口し、入口幅が約170メートルで、主として奄美大島及び沖縄航路の定期船が発着しており、港口の外側付近では大潮時などに強い北流又は南流が生じることがあった。
A受審人は、海上保安庁の大潮期平均流況図では、新港の港口外側近くの潮流が、北流、南流とも最大0.6ノットとなっていたものの、時折、大潮時などにそれを大きく上回る潮流があることを同僚から聞いており、そのことを知っていた。
A受審人は、通常、新港入航時の操船方法として、運航管理規程に定められた操船要領に従い、約8.5ノットの微速力前進とし、港口から概ね400メートル外側のところで、入航針路としている同港西奥の4号岸壁南端と防波堤入口の中央とを結ぶ270度の見通し線(以下「見通し線」という。)に乗せるよう、南防波堤灯台と鹿児島市内の城山に設けられたテレビ塔が一線となる地点で左転を開始して見通し線に乗せ、その後は風と潮流による圧流を勘案しながら同線から外れないようにして防波堤内に入航する方法をとっていた。

揚錨後、A受審人は、船首尾のスラスターを使用して回頭し、南防波堤灯台をやや右方に見る326度に向けたのち、17時58分両舷機関を極微速力前進にかけ、その後、徐々に増速して18時03分約13ノットの港内全速力前進まで上げ、同時04分神瀬灯台から236度900メートルの地点で、新港から出航してきた僚船とそれに後続する他社のフェリーを左舷側に替わすため、少し右舵をとって007度に転じ、同時07分半速力前進、続いて微速力前進に減じて進行した。
18時08分A受審人は、折からの1.2ノットの北流に乗じて11.2ノットの対地速力で、南防波堤灯台と前示テレビ塔が一線となる、同灯台から126度1,280メートルの地点に至ったとき、見通し線に乗せるため左舵約10度を令して左転を開始した。その後、同受審人は、18時11分半両舷機関を極微速力前進に減じて回頭を続け、同時12分半南防波堤灯台から077度520メートルの地点に達し、約280度に向首して対地速力が6.6ノットとなったとき、北流により圧流されて見通し線より少し北側に出ていることを認めた。

ところが、A受審人は、それまで2年近く新港の出入港を経験していて、大潮時には北流が強いときがあり、かつ、それが港口に近付くにつれて強くなる傾向であることを知っていたものの、両舷機関の使い分けと針路を少し修正するだけで対応できるものと思い、直ちに大角度の左舵をとって早期に見通し線に乗せる措置をとることなく、18時13分針路260度を令し、同時13分半北側への圧流に対抗するため右舷機を微速力前進にするよう指示した。
その後、A受審人は、針路が指示通りの260度となったものの、見通し線から50メートルばかり北側に出たまま同線に乗る様子がなかったので、更に18時13分半少し過ぎ南防波堤灯台から064度300メートルの地点で、針路255度を令し、同時14分右舷機を半速力前進としたが、強まってきた北流の影響で約255度に向首したまま、船体自体が約275度の方向に圧流されるようになった。

18時14分半船橋右舷側のウイングで操船の指揮に当たっていたA受審人は、北防波堤の方向に急速に圧流されて船首がその南東端まで約100メートルに迫ったとき、船首尾のスラスターの使用、両舷機関停止、続いて右舷機を微速力前進、半速力前進と矢継ぎ早に指示したが圧流に対抗することができず、同時15分少し前船尾を左方に振って同防波堤との衝突を回避するため右舵一杯、両舷機関を全速力後進に令したが、及ばず、18時15分あけぼのは、218度を向いた右舷船首部が、6.6ノットの前進速力で、北防波堤の南東端に衝突した。
当時、天候は晴で風力3の東北東風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、大潮にあたり、港口付近には2.7ノット余りのほぼ北に流れる潮流があった。
衝突の結果、あけぼのは右舷船首部外板に破口を生じ、北防波堤は南東端に一部損壊等を生じたが、のちいずれも修理された。

 
(原因)
本件防波堤衝突は、鹿児島港第2区の新港に入航する際、潮流に対する措置が不十分で、北防波堤に圧流されたことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
A受審人は、鹿児島港第2区の新港に入航するにあたり、北流により圧流されて港口に向く入航針路線の北側に位置しているのを認めた場合、大潮時には北流が強いときがあり、かつ、それが港口に近付くにつれて強まることを知っていたのであるから、北防波堤に圧流されないよう、直ちに大角度の左舵をとって早期に入航針路線に乗せる措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、両舷機関の使い分けと針路を少し修正するだけで対応できるものと思い、直ちに大角度の左舵をとって早期に入航針路線に乗せる措置をとらなかった職務上の過失により、強潮流に圧流されて北防波堤に衝突し、あけぼのの右舷船首部外板に破口を、北防波堤南東端に一部損壊等をそれぞれ生じさせるに至った。

以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

(参考)原審裁決主文平成10年9月2日門審言渡
本件防波堤衝突は、操船が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aの一級海技士(航海)の業務を1ヶ月停止する。






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