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2000年(平成12年)

平成11年神審第75号
    件名
プレジャーボート公憲被引浮環遊泳者負傷事件(簡易)

    事件区分
死傷事件
    言渡年月日
平成12年6月1日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

阿部能正
    理事官
橋本學

    受審人
A 職名:公憲船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
遊泳者が、頚椎捻挫

    原因
見張り不十分

    主文
本件遊泳者負傷は、公憲が、見張り不十分で、遊泳者を避けなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年8月13日18時05分
大阪府阪南港第3区二色の浜沖合
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート公憲
登録長 2.45メートル
幅 1.01メートル
深さ 0.40メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 89キロワット
3 事実の経過
公憲は、ヤマハ発動機株式会社製のGP8と称する、定員2人のFRP製水上オートバイで、A受審人が平成10年7月に購入し、大阪府和泉市の自宅ガレージに保管して、水上航走するときには自動車に載せ、主として大阪府阪南港第3区二色の浜付近の海岸まで運び、使用されていた。
A受審人は、同年8月13日06時00分公憲ほか3台の水上オートバイを載せた小型トラックなどに友人9人とともに分乗し、自宅から二色の浜に向かい、07時00分同浜の北側にある二色の浜海浜緑地と称する人工海浜に到着して、同時30分人工海浜と二色の浜との間の遊泳者が散在する水域で、公憲に乗り、単独で航走したり、また、公憲の後部から延出した長さ10メートルの化学繊維製ロープの端に、スキービスケットと称する外径約1.4メートルのビニール製浮環を繋ぎ、同浮環上に友人を座らせて引きながら航走を繰り返していた。

18時04分半A受審人は、阪南港泉佐野沖防波堤灯台(以下「泉佐野沖防波堤灯台」という。)から077度(真方位、以下同じ。)1,650メートルの二色の浜の波打ち際において、同人が公憲に乗り組み座席前部に座って操縦ハンドル(以下「ハンドル」という。)の操作に当たり、座席後部に友人1人を乗せ、浮環には友人1人を座らせたのち、同浮環を後方に引いて同浜を発し、沖合に向かった。
A受審人は、発進直後、針路を354度に定め、ハンドル操作により機関をかけ、瞬時に13.0ノットの対地速力とし、後方の浮環を気づかいながら進行したところ、18時05分少し前泉佐野沖防波堤灯台から073度1,670メートルの地点に達したとき、正船首方50メートルのところにほとんど静止して遊泳中のBを視認することができる状況にあったが、後方の浮環を見ることに気を取られ、見張りを十分に行うことなく、その存在に気付かないまま続航した。

その後、A受審人は、B遊泳者に向かって接近したけれども、依然見張り不十分で、これに気付かず、B遊泳者を避けることなく進行するうち、18時05分わずか前正船首方10メートルのところに同人を初めて視認し、左に回頭するようハンドルを操作したが、18時05分泉佐野沖防波堤灯台から071度1,680メートルの地点において、公憲はかろうじて替わったものの、浮環が、B遊泳者の後頭部左側に接触した。
当時、天候は曇で風力3の南西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
また、B遊泳者は、18時05分少し前接触地点において、水中眼鏡を着けて、西方を向き、ほとんど静止した状態で遊泳していたとき、突然公憲が接近し、前示のとおり接触した。
A受審人は、接触を知り、公憲から降りて気を失っているB遊泳者のもとに急行し、同人を友人と共に二色の浜へ運び、救急車を呼んで病院に搬送した。

その結果、B遊泳者は、救急車の中で意識が回復したものの、頚椎捻挫を負って入院した。

(原因)
本件遊泳者負傷は、大阪府阪南港第3区二色の浜沖合において、公憲が、見張り不十分で、遊泳者を避けなかったことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、大阪府阪南港第3区二色の浜沖合において、浮環を後方に引いて航走する場合、同沖合には遊泳者が散在していたのであるから、これに接触することのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、後方に引いている浮環を見ることに気を取られ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、遊泳者に向かって接近していることに気付かず、同人を避けないまま航走し、後方に引いていた浮環と遊泳者とを接触させ、遊泳者に頚椎捻挫を負わせるに至った。






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