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付録4 ニッケル鉱の安全運送に関する調査研究

 

1 調査研究の目的

平成10年8月26日夜、南大東島の南南西約150キロの海上で、インドネシアのGebe島でニッケル鉱を積載し我が国へ向けて航行していたパナマ船籍のばら積み船シープロスペクト号が転覆・沈没した。この事故により乗組員21名のうち、11名は救助されたが、10名が行方不明となった(8月27日付琉球新報)。事故原因の一つは、貨物の荷崩れであると推定されている。

粘着性物質であるニッケル鉱は、水分値が一定の値を超えると剪断強度が著しく低下し、荷崩れ発生の可能性(以下、「荷崩れ危険性」と呼ぶ。)が急激に高まることが知られており、これまでにも、ニッケル鉱運送中のばら積み船の異常傾斜事例が報告されている。ニッケル鉱を安全に運送するためには、貨物が有する荷崩れ危険性を評価することが必要であるが、ニッケル鉱の荷崩れは液状化とは異なる現象であるため、液状化物質に対する運送許容水分値決定法は適用できない。そのため、幣会IMO対応委員会は、平成9年度〜11年度の三カ年間で、「ニッケル鉱荷崩れ危険性評価試験法」を開発した。この試験法は、ばら積みニッケル鉱の安全運送に寄与することが期待されているが、この試験法により直ちにニッケル鉱の安全運送が達成されるわけではない。安全運送のためには、荷送り人と船舶がそれぞれの立場で、安全対策を実施する必要がある。

本調査研究の目的は、ニッケル鉱ばら積み運送の安全対策に関する情報を提供することである。

 

2 調査研究の概要

本調査研究のため、IMO対応委員会特殊貨物部会の下に、ニッケル鉱安全運送WGを設け、各種安全対策を列挙するとともに、その効果及び実施の難易について検討した。如何なる安全対策を採用すべきかについては、各事業者に委ねることとし、ここでは言及しない。一方、安全対策の基本は、ニッケル鉱ばら積み運送の危険性を関係者、即ち、荷送人、船舶の乗組員、荷役従事者等のそれぞれに正しく伝えることが重要との認識で一致し、検討の基礎となる情報をまとめた。

 

 

 

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