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第5章 ニッケル鉱の安全運送に関する調査研究

 

5.1 経緯

粘着性物質であるニッケル鉱は、水分値が一定の値を超えると剪断強度が著しく低下し、荷崩れ発生の可能性(以下、「荷崩れ危険性」と呼ぶ。)が急激に高まることが知られており、これまでにも、ニッケル鉱運送中のばら積み船の異常傾斜事例が報告されている。平成10年8月26日夜、南大東島の南南西約150キロの海上で、インドネシアのGebe島でニッケル鉱を積載し我が国へ向けて航行していたパナマ船籍のばら積み船シープロスペクト号が転覆・沈没した。この事故により乗組員21名のうち、11名は救助されたが、10名が行方不明となった(8月27日付琉球新報)。事故原因の一つは、貨物の荷崩れであると推定されている。

ニッケル鉱を安全に運送するためには、貨物が有する荷崩れ危険性を評価することが必要である。しかしながら、ニッケル鉱の荷崩れは、液状化物質の液状化とは異なる現象であるため、液状化物質に対する運送許容水分値決定法は適用できない。そのため、幣会IMO対応委員会は、平成9年度〜11年度の三カ年間、「ニッケル鉱の安全運送に関する調査研究」を実施し液状化物質の運送許容水分値に替わるニッケル鉱荷崩れ危険性評価法を開発した。

ばら積みニッケル鉱の運送において、荷送人と船舶がそれぞれの立場でニッケル鉱荷崩れ危険性評価法を適切に使用し、安全対策の実施を行うことが望まれる。本調査研究の目的は、ニッケル鉱ばら積み運送の安全対策に関する包括的な情報を提供することである。

 

5.2 調査研究の概要

本調査研究のため、弊会IMO・DSC特殊貨物部会の下に、ニッケル鉱安全運送作業部会を設け、各種安全対策を列挙するとともに、その効果及び実施上の問題点について検討した。如何なる安全対策を採用すべきかについては、各事業者に委ねることとし、ここでは言及しない。一方、安全対策の基本は、ニッケル鉱ばら積み運送の危険性を関係者、即ち、荷送人、船舶の乗組員、荷役従事者等のそれぞれに正しく伝えることが重要との認識で一致し、検討の基礎となる情報をまとめた。

詳細については付録4を参照されたい。

 

 

 

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