「ほんまに、ありがとうなあ」
「それがなあ、金太郎イワシやったでよう」
「今年の初もんやがあ。うれしゅうてな」
日焼けしたおじさんとおばさんの笑顔は、目とほっぺたがくっつきそうになっていた。
「よかったなあ」
「ほんまによかったなあ」
ぼくらは手をふった。
ヨシキのおじさんとおばさんの船は、船首を船だまりへむけてうごきだした。ドッドッドッドッ、エンジンの音が遠くなってゆく。あとの海には、もういくつもの漁船がシルエットになってうかんでいる。
ぼくらの足は、いつのまにか潮だまりへと急いでいた。
「そうや、ぼくらも大漁や」
二人は、えものをとりかこんでいった。
にいちゃんの竹ざおにしばりつけた、あみぶくろの中には、大きなクロクチ貝が、口をからみあわせるようにのばしていた。
ぼくのバケツの中では、金太郎イワシがみんなげんきに泳いでいた。
「タケジロウ、今日はおまえの初漁やのう」
にいちゃんがぼくに頭をよせてきた。夕焼けの空を、飛行機雲が一本まっすぐにのびていった。