「しかし、自分から協力を申し出ている最後のひとりですよ。ご心配なら前もって作業計画書と費用見積もりを提出させ、それを検討してから結論を出したらどうでしょう」
「では、そうしてみるか」
イシバシ様のひと言でキウエモンが再登場することになった。
七
十二月二日、キウエモンから計画書が提出された。書面には作業手順と必要資材が書き込まれていた。日本字が読めない俺に理解できないのは当然だが、奉行所の連中はじめ出島乙名たちも計画書に書いてある内容が理解できないようだった。
もっと判りやすく説明せよ、と要求されて二日後、キウエモンは新しい書付と簡単な模型を提出した。掩はそれを見て、はっと気づいた。そこには俺がトランブル号で経験した方法に加え、さらに複雑な仕掛けを加味した素晴らしいアイデアが随所にみられた。
添付された書付は経費見積の代わりに、
「この仕事、費用は一切請求しません。自腹を切ってもやり遂げてみせます。もしも成功したら、来秋紅毛船が来るとき何か珍しい物でも記念に貰えればそれで結構です」と記してあった。俺はキウエモンのガッツに驚いた。