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第四回海洋文学大賞の選考を終えて

曽野綾子選考委員長(小説・ノンフィクション部門)

 

今年特に感じたのは、若い作家の文章がますます水っぽくなって来たことだった。褒めて言うのではない。濃縮の度合いが少なくなったのである。理由は多分、手本にすべきいい小説をあまり読んでいないのである。

その中で『寛政猿兵衛師』がまとまっているということで、意見の一致を見た。候補作の中でたった一つ或る余裕を感じさせる構成である。『海流のボニート』によって、私はカツオについてのたくさんの貴重な知識を得たのだが、知っていることを並べて書くにも、ほんとうは何気ない技巧がいる。平板な記録映画風になりかけているのが惜しかった。『もう一つのタイタニック』についても、おもしろい資料がたくさん用意されていたのだから、ハイライトの当て方にもう一工夫欲しかったと思う。

 

 

 

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