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n:積層枚数

 

熱伝導率を更に減少させるためには、薄板表面の面粗さを粗くし、固体同士の接触面積を小さくするか、薄板表面に熱伝導率の小さなジルコニア等をコーティングする方法が考えられる。

ジルコニア材の熱伝導率は、2.3Kcal/m・h・℃である。コーティング厚さを0.2〜0.3mmとすれば、見かけの合成熱伝導率は金属板を積層した場合と比較し、1/2〜1/3以下とする事が出来る。

 

6.1.5 吸排気ポートの遮熱

遮熱形エンジンの吸排気系を遮熱する事は、大きな意味を持っている。排気ポートは燃焼ガスが排出される時、排気ガス温度が700℃〜800℃であり、排気弁のシート部を通過するガス流速は100m/sを超える。この条件では、熱が多量に移動し、シリンダーヘッドへの熱流が増大し、温度上昇する。排気管に流れる排気ガスエネルギーをタービン仕事、又は燃料改質に使うためには、排出経路での熱放散を極力減少させる必要がある。

本研究では、ヘッドライナーに設けられた排気孔に内接するようにポートライナー内筒材を配設し、そのポートライナーがシリンダーヘッドのポート部にその外側に空気層を持って嵌合されるように配設され、ポートライナー内筒材と組み合わされ、連続した排気ポートライナーを構成している。(図6.5)(写真6.4)

 

シリンダーヘッドとは、バルブの取付座部に多孔質材を置き、排気ポートのシリンダーヘッド出口部には、薄板で成型したフランジを取り付け固定する様にした。フランジ部は、気密性を保たせる様にし、ポート外周での排気ガスの流れが無いようにした。ポート外周の空気層は、ガス流れが少ない場合、その空気は熱伝導材となり、空気流れが存在すると対流により熱が移動する。外周空気層は熱伝導材として取り扱えれば遮熱効果は大きく、対流により熱が移動すれば、遮熱効果は小さい。その場合は、排気ポート外側に耐熱セラミックス繊維等を詰め、高温排気ガスの流れを止めることが、有効な遮熱手段となる。

従来の研究では、こうした排気ポートをシリンダーヘッドの鋳物を製造する時、鋳包みを実施したが、シリンダーヘッドの材料であるFC25の溶融点は、1500℃以上であるので、金属製ポートライナー材はほとんど熱変形し、使用に耐えられない。又、窒化珪素セラミックスを鋳込む場合、そのポートライナーに鋳込時の収縮により割れが発生した。

本研究では、ポートライナーすべてを嵌込み式としたため、従来経験した不具合一切が無く、スムーズに組み付ける事が出来た。

吸気ポートの役割は次の通りである。

 

遮熱エンジンでは、シリンダーヘッドの温度が120℃を超える。この高温度となったシリンダーヘッドの吸気ポート部分を吸入空気が通過すると、吸入空気が熱を受けて温度が上昇する。吸入空気温度が上昇すると当然、シリンダー内での空気の圧縮端温度が高温となり、シリンダー内に在る希薄混合気が自着火し、ノッキングが発生する。従って、吸気が吸気ポートを通過する時、シリンダーヘッドからの熱が吸気に出来るだけ移動しないポートライナー構造が有益である。構造は排気ポートと同一だが、吸気ポートはシリンダー内の混合気の撹拌を促すため、適度なスワールを生成させる必要があるので形状を変化させてある。

天然ガスの自着火温度は800℃なので、圧縮始めの空気温度を88℃以下にする必要がある。

 

 

 

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