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5.2 高効率タービンの設計・試作・評価及び改良

(1) 高効率化

自動車用ターボ過給機のタービン翼をベースにしたタービン翼を高圧力比の回収タービンに使用した場合のタービンの特性検討を行った。流出部の速度線図を図5.4に示す。

簡易シミュレーションにより動翼損失の検討を行った。結果を表5.2に示す。動翼出口角度を55°から30°に低減することにより流出損失を10%から4%に低減できるのでタービン効率を6%改善できることが明らかになった。

目標とする翼諸元に基づいて3次元の翼形状を決定するプログラムを作成した。結果の一例を図5.5に示す。

 

(2) タービン翼三次元形状の作成

動翼諸元の検討結果に基づきタービン動翼の三次元形状データを三次元CAD及び自動化プログラムを使用して作成した。

図5.4に示した従来型タービンの動翼の改良により効率向上を目指す。仕様選定の狙いは次の通りである。

1] 高い圧力比(入り口圧力と出口圧力の比)における効率向上をねらって流出部の傾斜角αを従来タービンの約50°から30°に低減する。

2] 動翼出口においてガスが確実に翼に沿って流れるように翼出口を延長し、面積変化の小さい流路を追加して剥離等の発生を防止する。狙いの流量特性からのずれを考慮して翼の流出角度を細かく変化させることにより3種類の仕様を選定した。自動プログラムに、ハブとシュラウドの投影面形状、翼に沿った傾斜角データ及び翼肉厚と湾曲度を入力することにより、タービン入り口から出口までの正圧面、負圧面の三次元形状を作成できる。プログラムのフローチャートを図5.6に、ハブ面での翼端曲線の作成状況を図5.7にこのプログラムを使用して得られた立体モデルを図5.8に示す。タービン翼試作メーカにおいてこの数値データを三次元加工機に入力して鋳造のための原型モデルを作成した。

 

(3) タービン翼の試作

表5.3に示す動翼の三次元形状データを使用して動翼のワックス型を作成した。出口傾斜角28°の翼は傾斜の度合いが大きすぎて翼が成立しないことが分かり作成を断念した。

動翼ワックス型を使用してロストワックス法により翼を精密鋳造した後シャフトをビーム溶接し機械加工仕上げを行ってタービンシャフトを試作した。試作タービン翼と既存タービン翼の写真を図5.9及び図5.10に示す。試作タービン翼の狙いは高い圧力比における流出損失を低減するために翼出口の傾斜角を小さくしたこと及び流出部に平行な流路を設けて流れの翼からの剥離を防止することにより高効率の実現を図ることである。既存タービンの効率約75%に対して試作タービンは一次目標として80%を目指している。

タービン評価のためのターボ過給機の構造を図5.11に示す。タービンスクロールに静翼を組み込み静翼の流出部の流路面積を変えてタービンノズルの流量特性を調整した。表5.4及び図5.12に静翼の仕様及び詳細形状を、図5.13にタービンスクロールの形状を示す。

 

 

 

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