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さらに、大きな違いは、中国側の図書館には、日本語・ハングル・ロシア語の本を読んで配架できる司書がいることです。大連市の図書館を訪問したときのことです。日本語の本の置いてある図書室がありまして、そこの司書はもちろん日本語が話せます。そこで「こんな本はありますか」と聞くと、すぐに本を引っ張りだせる司書がいました。しかし日本側は、もちろん日本語の本については日本の司書さんたちは当然プロですが、その一方で図書館を対外交流の知的インフラと考えた場合、全く機能しないのが現状です。例えば、県庁で比較しても、同じように対外政策を持っていますが、例えば遼寧省の場合は、その下に国別の政策がついている。なぜマクロの部分での政策は同じで、ミクロの部分で日本は突っ込めないのか、その原因は知的インフラの差ではないかと思います。

そう言うと、皆さんは「質はどうですか」とよく質問されます。確かに、学問的な質、最先端の理論を使っているとか、大型コンピュータを使っているかで比較すれば、日本側の方が優位だと思います。

ただ、私がとても感心したのは、私が接触した中国人の若い研究者たちは、朝鮮語、日本語、中国語の組み合わせで話せる人たちがたくさんいることです。中国では民族学校を奨励しています。例えば、朝鮮学校の人たちは、大学に入るときには、アメリカのように、点数が多少低くても入れるような、少数民族に対する優遇政策を引いています。高校に入るまでに、朝鮮族系の学校で、中国語と朝鮮語、さらに日本語を教えているところがたくさんあります。そういう人々が大学に入って英語を勉強する。日本の地方に行きますと、バイリンガルを探すのがとても大変です。特にロシア語や中国語や朝鮮語といった主流ではない言葉のバイリンガルを探すのは、とても大変です。ただ、中国の地方都市には、バイリンガルではなくて、マルチリンガルがたくさんいる、そういう人たちが研究しています。これは、質的な面で日本が劣る、注意すべき内容ではないかと思います。

以上、私がここで申し上げたかったことはただ1つです。日本では、公と私、中央と地方を考えると、当然のことのごとく公が強く、中央が強い。しかし、これからは役割の違うパートナーとして組んでいく必要があると思います。これまでの考え方を覆す上で、地方自治体の国際交流というのは注目すべき事例ではないかと思います。今回のお話を通じて、皆さんに多少なりとも中国や日本の国内の地方自治体の国際協力に興味を持っていただければ幸いです。以上です。(拍手)

 

 

 

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