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二つ目が、「デファクト標準を通じた競争」です。これは、マイクロソフトなどに見られるように、業界の事実上の標準をとったところが、うまい汁を吸うことができるというものです。今は「デファクトを通じた競争」が主流ですが、一部の業界ではデジュール標準を通じた競争というのも始まっております。つまり、デファクトとデジュールを組み合わせた形で、国際標準化機構の規格を、意図的に自分たちに有利な方向にしていく。このようなことはITの世界でもぼちぼち起こり始めていますが、これは今日の本論ではありませんので、あまり触れません。

それから「収穫逓増メカニズム」、あるいは「一人勝ちの経済」といわれている変化があります。平たく言うと、強い者が勝つ、強い者がどんどん有利になることです。先にビジネスを始めて、ある程度のお客さんを確保したところが、より強くなっていく。弱い者はどんどん弱くなっていく。そういう世界です。

最後のポイントは、これが今日の本論ですが、「ビジネスモデルを通じた競争」です。今までの競争、例えば、家電製品に見られるように、いい製品をいい技術で世の中に出していけば勝てる、あるいは、安いコストで競争すれば勝てるという世界から、それだけではない、「ビジネスモデル」を通じて競争していくという形に入っています。

これも、今日の本論ではありませんが、アメリカでは、ビジネスモデルが特許になるということで、自社のビジネスモデルを特許で守って、優位性を確保する動きも出てきています。日本でもビジネスモデルが特許になるのかどうかという議論もあるようです。知的財産関係の方に聞きますと、一部ではすでにその方向で動いているということです。そういう意味でも、ビジネスモデルは重要なファクターだということです。

これらのポイントの全部は詳しくお話しする時間がありませんが、最初の「競争と協調」のところだけを取り上げて少し詳しくお話しします。

電気通信産業というのが、まさに競争と協調のひな型といいますか、代表的な産業です(資料4頁)。今日も、電気通信関係の方がいらしていますが、今までは、ローカルでの競争だったものが、グローバルな競争になってきている。それぞれの国ごとにPTTと呼ばれる電気通信のキャリアがいて、昔の航空産業ではありませんが、それぞれがナショナルフラッグのような形で守られていました。しかし、最近は国境がなくなってお互いが競争しています。

 

 

 

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