牧野 それでよろしいですか。では、李さんにも。
李 日本の大衆文化が韓国でも受けているのには、いくつかの理由があると思います。韓国に限って話をすると、もちろん豊かな国に対する憧れが大きく作用をしていることはたしかであります。豊かな国に対する憧れというと、日本だけに限らず、アメリカに対してもそういう気持ちを抱いています。
韓国人は経済的に日本が韓国より優秀であると認めています。ただ、文化的に日本が韓国より優れているというのは認めておりません。文化というのは違いがある。差異があると考えておりまして、上とか下とか上下関係として受け取っていないのです。文化が上から下に流れるということには賛同できません。
日本の大衆文化が韓国で一番受けている大きな理由として考えられるのは、素材の豊かさ、それから想像力を立たせるような物語です。先ほども話したんですが、韓国の場合はすごく長い間にわたって検閲が厳しくて、作品にも大変な制限がありました。自分の周りで接するようなものにはだいたい限界があったんです。それに比べて、日本から入ってきた大衆文化というのは、いままで韓国で見たことがない表現とか、素材とか、物語がありました。それには韓国人の好みといいますか、興味とか好奇心を刺激する、それに応えてくれる作品だったんです。
もう一つは海賊版です。韓国では検閲が厳しいということももちろんあったのですが、皆さんご存知のとおり、正式には韓国に日本の大衆文化が入ることはまだできないんです。最近やっと解放されたんですが、それまでは韓国で接することができた日本の文化というのは全部海賊版でした。ただ、去年、一昨年からある程度日本の大衆文化が韓国でも認めることになってからは、韓国で海賊版はほとんど消えました。
いまのところ、韓国に日本の大衆文化というのはほとんど解放されていますが、ただ、三つだけはまだ禁じられています。