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序章:調査研究の概要

 

1. 調査の背景と目的

 

神戸港は慶応3年(1868年)の開港以来、130余年の間、わが国の中枢港湾として輸出入貨物の取扱を中心に発展してきた。この間、コンテナ取扱量が世界一となる時期があった等、西日本の国際貿易港としての地位を確立してきた。

一方、カーフェリー網が整備された昭和40〜50年代にあっては、瀬戸内海、九州方面への旅客船基地としての整備も行われてきた。

このような中にあって、神戸港は平成7年1月の阪神・淡路大震災により大打撃を受け、物流施設、旅客船関係施設等あらゆる施設が損壊した。官民あげての復興工事は、2年間で神戸港を元の状況に戻すとともに、使いやすい「みなと」への転換を図っていった。

しかしながら、震災から6年を経た現在においても、神戸港における物流面での取扱量等は、震災前の状況の8割程度にしかなっておらず、また、旅客船、フェリー航路は平成10年4月の明石海峡大橋の開通により、大幅な地盤沈下を強いられている状況にある。このような中、神戸港の活性化を図るための方策は、各方面で種々考えられており、各種の提言が出されているが、観光船事業等の活性化もその方法の一つであると考えられる。

神戸市内には、北野異人館、南京町をはじめとする各種の観光施設があり、また、神戸まつり、ルミナリエ等のイベントが開催され毎年多くの観光客が訪れている。そして、神戸港には、海上から陸上側を望み手軽にクルーズが楽しめる様々な船型、周遊コース、船内サービスを提供する観光船が就航しており、各船社においては創意工夫を凝らした営業活動を行っているが、市街地と海辺が近接している神戸へ訪れる観光客が、必ずしも海上観光を楽しむ又は、海上交通の利用を楽しむという流れになっていないのが現状である。

神戸のウォーターフロントにはホテルを初めとした宿泊施設、大規模商業施設や美術館などの優れた集客施設があり、また、大阪湾地域には、明石海峡大橋、国営明石海峡公園等の既存観光スポットに加えユニバーサル・スタジオ・ジャパン、神戸空港等の大規模プロジェクトが進められている。

このように神戸港を中心とした海上観光のポテンシャルは極めて高く、これらの施設を有効に活用した魅力的な海上観光航路の開発と新たな需要の掘り起こしを行うことにより、海上観光事業等の活性化及び震災以降低迷している神戸港の活性化を図る必要がある。

このため、本調査では陸上観光施設を含めた様々な観光資源を活用した魅力的な海上観光コースや船内サービスの設定とともに、新たな需要を喚起するために、神戸を訪れる観光客や宿泊施設を含む集客施設の意向や旅行業関係者のニーズを把握し、求められる環境・施設整備のあり方を調査し、神戸港を起点とする海上観光航路の開発を検討するものである。

 

 

 

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