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第5章 大阪港の港湾運送事業の経営基盤強化及びサービス向上方策

 

1. 港湾運送業の規制緩和前の問題点と規制緩和の狙い

第2章の4、(2)(18ページ)の港湾運送事業の沿革で述べたように、港湾運送事業における免許制等の規制は安定的な港湾運送業務の提供を確保し、日本経済の発展に大きく寄与してきた。しかし、その一方で、免許制等の下では、新規参入が自由でなく、料金も硬直的であるため、事業者間の競争が生まれにくく、船社、荷主のニーズにあったサービスが提供されにくいという問題が生じていた。

また、港湾運送事業は、戦後、零細事業者が乱立し、その後免許を得たこれらの事業者間の競争が免許制によって制限された結果、現在に至っても多数の中小事業者がそのまま存在する状況となっている。

そのため、波動性や日曜荷役、夜間荷役などについてこれらの事業者が柔軟に対応できないというような問題も生じてきている。

日本を巡る海上貨物量が大きく伸びていた時代には、港湾運送の安定化が強く要請され、免許制等がその役割を大きく発揮したわけであるが、日本経済が成熟し、海上貨物量も伸び悩むとともに、アジア諸港の港勢の伸長により従来日本の主要港が扱っていた日本、アジア貨物の一部がこれらのアジア諸港を経由するようになるなど港湾運送を巡る情勢が大きく変化するなか、免許制等は、その効果よりもその欠点の方がむしろ大きな問題となってきた。

このような環境変化が、免許制の廃止等の規制緩和の引き金になったわけであるが、わが国の港湾運送事業者は中小事業者が多いことから、規制緩和により競争原理を導入するとともに併せて協業化等による事業規模拡大等により経営基盤の強化を図らなければならない。港湾運送業界が経営基盤の強い事業者で構成されるようになれば、荷主・船社のニーズに応じた質の高いサービスとそれに見合う料金の収受も可能になってくると考えられる(図5-1.)。

 

 

 

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