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この研究では、たくさんのケアする人の生きていく姿に出会うことで、調査する私たちが多くのことを学び、成長する機会を得ました。

また、調査に協力していただいた人からは「自分の置かれている状況を語ることは、何とか言葉にしようとする過程で、自分自身の抱える問題を整理し、答えを見つけていくことにもつながる」といった声も聴かれました。

私たちの問いかけによって言葉が紡ぎだされ、それを調査する私たちが受けとめ、再び現場に返していく―すなわち私たちが行った調査は、すべての過程において、調査に協力していただいた人たちとの協働作業でもあったといえます。この協働作業、すなわち「話す・聴く」という営みを拡げていくことが、ケアの文化の構築に向けて私たちができる第一歩であったと考えています。

「ケアする人のケア」の調査研究は、ケアの現場に「ケアする人にもケアが必要である」という新しい視点を持ち込みました。そしてそのためには、セルフケアが必要であること、そのセルフケアを支えるためには、他者の存在、他者による何らかの働きかけや環境が必要であるということを、ケアする人と共に明らかにしてきました。

これからの課題は、ケアする人が自分を癒すことのできる環境をいかにつくっていくのか、他者が働きかけをする具体的な手法がどのようなものかということです。

この調査研究をきっかけにして始まった私たちの対話、そのネットワークを拡げながら、21世紀の新しい文化「ケアの文化」を築き、ケアに関わる一人ひとりの生き方や、人と人のつながりを大切にしていける社会づくりをめざしたいと考えています。

 

 

 

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