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発刊にあたって

 

21世紀は、人間が人間を求める時代だといわれています。とくに、高齢化社会を迎え介護の問題がクローズアップされるにつれ、ケアをめぐるさまざまな問題が生じています。

質の良いケアを提供するためには、ケアする人をサポートするシステムが必要です。ケアする人が精神的、肉体的に困難に陥ったときに適切なサポートがあれば心身ともに癒され、ケアに対してポジティブな取りくみが期待できると考えられるからです。

しかし、良いケアを適切に効率良く提供するためのマネジメントは頻繁に取りあげられますが、ケアする人をサポートするシステムについては、充分に議論されているとはいえません。

そこで、私たちは有志で「ケアする人のケア・サポートシステム研究委員会」をたちあげ、「ケアとは何か」「ケアする人はどのような状況にあるのか」「ケアする人が必要としているものは何か」を議論してきました。ここで明らかになったことは、ケアを一般的な「介護」という言葉で表されるような一方的な援助の関係にとどまらず、人間と人間の間にある相互的な営みとしてとらえる必要があるということです。

「ケア」をこのように定義し直したうえで、多くの人と問題を共有するために「ケアする人のケア」研究集会(2000年9月29・30日/於:大阪国際交流センター)を開きました。ケアに関わる人たちが全国から集い、多様な視点から「ケア」について議論し、ケアの文化を構築していく必要性を示しました。

また、委員会が中心となって、ケアする人の状況を明らかにするためのアンケート調査、聴き取り調査を行いました。本書には、研究集会の講師や研究委員からの報告とともに、調査に協力していただいたケアする人の生の声をいくつか掲載しています。ケアする人にとって本当に必要なことは、ケアする人自身の言葉で語られることによってこそ明らかになり、必要なシステムをつくりだす原動力になると考えたからです。

ともすれば「孤独と孤立」のなかにとじこもりがちなケアする人の言葉が、社会に広く伝わるように、また同じ立場の多くの人がこれによって少しでも元気になるように願っています。そして、本書をきっかけにして、ケアをめぐる対話をさらに深めていきたいと思います。

最後に、アンケートや聴き取りの調査に際しては、じつに多くの施設や機関、個人の方々にご協力をいただきました。ここに心よりお礼を申し上げます。

 

2001年6月

財団法人たんぽぽの家内

ケアする人のケア・サポートシステム研究委員会

 

 

 

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