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はじめに

 

集団感染や院内感染の増加、青年層や都市部における患者増加など、日本の結核問題には複雑な要因が混在しています。厚生省は平成11年7月に「結核緊急事態宣言」を打ち出しましたが、結核は依然として減少の気配を見せず、いまだにわが国最大の感染症です。

一方、世界では、毎年発生する患者が800万人、死亡は200万人に達すると推計されています。特にアジアを中心とする途上国においては、治療法が確立した現在でさえ多くの人々がその犠牲となっています。

このような現状を背景に、昨年7月の沖縄サミットでは3大感染症の一つのとしてエイズ・マラリアとともに結核が取り上げられ、日本を含め世界の主要国が優先的にこの問題に取り組んでいく姿勢が示されました。

世界の結核対策は、95%の治癒率が実証されているDOTS(Directly Observed Treatment, Short-Course、直接監視下短期化学療法)戦略を中心に進められており、最近は、日本国内でも一部地域でDOTSが試みられています。

本会では、国際協力事業の一環として、平成5年に日本財団の援助をいただき、WHOと共催でアジア地域の結核対策担当者を東京に集め、「アジア太平洋結核対策推進会議」を開催し、最新の結核対策パッケージを地域に普及することに努めました。以降、モンゴル、インドネシア、ベトナム、タイ、中国においてセミナーを実施し、国または地域レベルの結核対策の推進に協力してきました。

平成12年度は、モンゴルにて第4回目となる国家レベルの結核予防セミナーを開催しました。当国に対しては、旧社会主義体制下の結核対策から世界的な考え方に基づく対策への移行が行われた1994年より、継続的に支援を続け、その発展を見守ってきました。

当事業の成果が実を結び、モンゴルはもとより世界の結核対策の推進に貢献できることを願っています。

 

平成13年3月

財団法人結核予防会

理事長 大池眞澄

 

 

 

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