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第2章 研究の内容

 

海面の高さは、時間の経過とともに潮汐による昇降、気圧・風浪などの海象現象等により常に変化している。

海面高の変化の状況を把握するための基準となる水面の名称を図1に示す。

海洋測量における水深の基準面は、世界各国でその定義が異なっているが、船舶の安全のため天文潮の組み合わせによって起こりうる最低の面あるいは、ほぼそれに近い面を採用している。基本水準面は図2に示すように平均水面と関係づけられており、その差を国際的略号であるZ0で表記している。我が国ではZ0値を潮汐における主要四分潮の半潮差の振幅の和と定め、地域ごとに独立に決められている。従って基本水準面は地域により、必ずしも同じ水準面ではないが、その海域の平均水面を知ることにより求めることができる。また、水深の基準面を保持するために各地に基本水準標石や標識が設置されており、その標高とZ0の値が海上保安庁発行の書誌741号「平均水面及び基本水準面一覧表」(以後書誌741号と記す)に記載されている。さらに、各験潮所ごとに決定されるZ0からその適用範囲を定めるために、海域に0.1m単位でのZ0区分帯を設定している。従って、従来の方法では区分帯の境界において結果にその差が生じている。

基本水準面を決定するときには少なくとも1年以上の潮汐観測を行い、その結果から平均水面を求める。主要四分潮とは主太陰半日周期(Hm)、主太陽半日周期(Hs)、主太陰日周期(Ho)、日月合成日周期(H')の和であり

Z0=Hm+Hs+Ho+H'

として表すことができる。書誌741号に記載されているZ0は1cm単位を丸め10cm単位で表現されている。また、一旦決定されたZ0は、決定後に10cm以上の差違が認められなければ変更しない。従って、同誌より求められる基本水準面の精度は10cm単位でしか表現できない。これに対し、本研究では測量精度向上のため主要四分潮、Z0、平均水面等について高い精度を要求されている。そこで本文中では1cm単位までの精度を表現したものを特に「精密」Z0として呼称し、従来のデータと区別している。

さらに、本研究では、図2に示すように、海洋測量における従来の基本水準標と基本水準面の関係を、基本水準標をもとにした準拠楕円体と基本水準面の関係に変え、図3に示すような測量船上でGPSによる測量船の楕円体高を測量すると同時に水深測量結果が得られる環境を整えられる手法の開発を目指している。

なお、基準となる回転楕円体については特に表示しない限りWGS84を基準としている。

 

 

 

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