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第1章 研究の概要

 

1.1 研究の目的

近年、主としてGPS測位システム、ナローマルチビーム測深機等を用い、データ集積、処理にコンピュータシステムを組み込んだ水路測量方式が出現し、技術的な環境が一挙に革新されつつある。なかでもキネマチックGPS(以下K-GPSと呼ぶ)方式によると船位もメートル単位からセンチ単位での高精度測定ができるようになり、また、高さの測定精度も10センチ以内と格段に向上し、地域的な海図水深の基準面と世界測地系の楕円体面との正確な関係づけが可能となり、船舶の精密な高さを測定して直ちに実水深が得られる可能性が見込まれることから、水路測量の効率向上のみならず、大型船舶の制限海域航行の緩和、喫水制限港の緩和に貢献することが期待されている。

また、K-GPSの高精度船位測定とナローマルチビーム測深機による高密度デジタル測深方式により海底の未測定部分が全く無い理想的な成果が得られるようになりつつある等水路測量は技術的には飛躍的に発展している。

しかし総合的な見地に立つと、新しい技術の導入にもかかわらず、デジタルデータの編集、解析処理技術の運用、誤差評価等に意外な人手を要しているため、成果の効果的な提供が遅れている等の問題、課題が指摘されている。

このような現状に際し、問題点及び課題を検討して解決策を研究して、水路測量の総合的な効率の向上を図り、もって海難の防止等に寄与することを目的とする。

 

1.2 研究内容の概要

本研究は、陸上固定点(基本水準標)及び海上移動点においてK-GPSの高精度実測及び既存データの収集・解析から得られる高さ(世界測地系に準拠した楕円体上の値)と地域分布を正確に表す基本水準面高低モデルの開発、高低マップ作成及び測量船の高さ精度の検証を実施し、従来の験潮器観測データによる潮高補正処理に代わり測量船の高さ(測深点の高さ)を直接測定することにより任意の位置の実水深が得られる可能性を明らかする。

また、デジタル測深データ編集、処理過程における誤差の判別及び不良データ除去等問題点、課題等の解決策検討により、水路測量の総合的な効率向上を図る研究を3年計画で行う。

対象海域は、潮位の変化が激しく、従来での高さ基準である基本水準標が周辺沿岸及び島嶼に適度に分布しているほか、最新水路測量データ等の収集、検証が比較的容易な瀬戸内海とする。

 

 

 

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