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瀬戸内海の櫂伝馬では「海賊」「水軍」からの発祥が伝えられ、熊野ではやはり「海賊」「水軍」それにクジラ漁からの発祥が言われている。

以上で推測されるように、櫂伝馬は日本列島における船競漕の中でも、歴史と伝統を有し、かつ神事と強く結び付いた行事である。

 

櫓漕ぎ競争

櫓漕ぎが地域で集中するのは壱岐・対馬の「ふなぐろう」である。他の地域では三重県や愛媛県、山口県などがあり、全国的に散在する。櫓漕ぎの地域は祭りとしては個性的な祭りが多い。

櫓は舷側か艫で、漕ぎ手は横向きで漕ぐ。漕ぎ手の数は現在では愛媛県津島町の「はだか祭り」で40人というのもあるが例外的で、ふつう5本程度の櫓によるものが多い。もっとも1本の櫓を交替で漕ぐため櫓数の倍の漕ぎ手が乗るのもある。櫓漕ぎでも進行方向を決めるに重要な役割を果たすのは艫押しといわれる艫の櫓を使う人である。

櫓が漁船から消えて久しいので、近年、櫓による競漕は急激に減少して行く。長い伝統をもつ岡山県笠岡市の「おしくらんご」も平成12年は中止となった。三重県熊野市二木島祭りも後継者の不足から5月の競漕が中止、11月の本祭りもはじめて中学生を乗せて凌いだ。

 

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ペーロン

ペーロンと言えば長崎である。長崎市はもちろん、西彼杵郡、五島列島、大村湾などでいまも盛んである。長崎県以外では、長崎からの伝承がはっきりしている兵庫県の相生ペーロンが有名であるが、古い時代(江戸時代〜明治と言われる)長崎県から伝わった不知火海周辺のペーロンは熊本県天草苓北じゃっと祭りペーロン、松島町の白龍船競漕に名残をとどめる程度になっている。

 

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