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個体モデルの経路選択シミュレーションは「内航旅客船用避難経路評価法(草案)」の事故シナリオにも答えられる。

 

3.5 各計算手法の比較

各計算手法についての比較を表3.5.1に示す。

ガイドラインと防災指針は、避難経路における計算を、部屋の出口、合流点、階段等の代表となるノード間で一度に計算を行うことから、「代表ノード間解析法」と分類し、群体モデルと個体モデルは、人を時系列に沿って移動させる解析法であることから「人体移動シミュレーション法」と分類した。

ガイドラインによる解析手法は、通路の有効幅、人密度に応じた歩行速度、流動係数の使用など、詳細な設定があるものの、防火隔壁に囲まれた階段室に逃げ込むことのみを想定したシナリオになっており、その他船種等への融通性がない。また、総避難時間の計算も、式がシンプルな割にはわかりにくい設定であり、経路配置のフレキシビリティ、船員逆流の対処等も安全係数で大まかに処理されている傾向がある。

防災指針は、基本的には群体モデルによるシミュレーションを代表ノードで行っている方式である。基本として、通路の面積は使用しないが、通路距離と歩行速度からノード到達時間を計算し、ノードの開口幅による流動係数により流出時間を計算する。各ノードにおいて、滞留者数、滞留時間が得られ、同一の避難経路を使用するグループ毎に避難の完了時間も計算できるとともに、コンピュータなどの特別な道具も必要とせず簡易的に解析できる手法である。

人体移動シミュレーション法は、コンピュータを使用し、実際の人体移動を模擬することから、詳細な解析が可能となる。代表ノード間解析法との大きな違いは、滞留の取り扱いなどにある。人の移動をシミュレーションすることから、代表ノード間計算法より細かく人の移動を計算する。このため、実際の人の移動と同様に、人の移動停止状態(滞留状態)は合流点、階段入口等だけでなく、通路途中においても発生する。このため、代表ノード点における最大滞留者数は、代表ノード間計算方法に比して小さい値になる。同様の理由により、総避難時間は若干大きくなる傾向にある。シミュレーション解析の方が解析としてはより精密であるが、反面、手法としては複雑になる。

 

 

 

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