日本財団 図書館


これは人が1人1人エージェントとして状況を判断し、経路を自ら決めながら行動するシミュレーションである。1]に人間モデルを追加している。ここで設定された人間モデルは集団心理モデルである。前者が解けなかった問題、「その経路が集団心理に照らして妥当か」、「最適避難経路を求める」、「最悪避難ケースを求める」などが解ける。あらゆる心理状況を計算し、最適・最悪ケースを求めることを基本としているが、計算ケースが多いときは簡便な最適・最悪ケースの導出方法を与えている。また、最適ケースから最適脱出経路図を作成できる。これは集団心理という人間行動の自然の摂理に適った経路である。

集団心理の人間モデルは、次の5項目でできている。

1) 避難場所への早期到着願望がある。

2) 自甲板からの情報は視覚、聴覚、嗅覚等を使ってすべて把握できる。

3) 他甲板については、心理上で想像するだけである。

4) 集団心理が支配的である。

5) 人のタイプ(大人、子供、老人、障害者に分類)で歩行速度、行動開始時間が異なる。

ここで心理量として、階段から先集合場所までの想像上の距離を想像距離と名付ける。各人は集合場所に至るすべての経路について、(自甲板上の歩行時間) + (自甲板上の滞留待ち時間) + (他甲板の想像上の距離を歩く時間)を計算し最も小さい値をとる経路を選ぶことになる。そして、集団心理の仮定から他甲板の想像上の距離は心理的に同一集団で同一の値をとる。このことは心理的変数を少なくし計算を著しく簡便にする。

各人は各ノードにおいて環境(自甲板)から情報を得て、集団心理の状態(想像距離の値)と合せて最短経路を選択判断する。各人が判断能力をもっているマルチエージェントのシミュレーションである。

 

3.4.2 固定経路のシミュレーション

モデルシップのシミュレーションの結果は、総避難時間は186秒で、最終避難経路はルート6で、最大滞留時間は120秒で、その滞留場所はZ=1甲板の左舷中央出口であった。これはルート5の暴露甲板への出口である。

ここで、表3.4.1に設定定数の感度解析結果を示す。限界流出係数・人の限界密度・コーミングの有無・歩行速度を設定値(標準ケース)から変化させて、総避難時間、最大滞留時間を調べた。歩行速度が総避難時間に大きく影響していた。これは最終避難ルート6が歩行によって特徴付けられていたからで、一般的にはそうでないこともありうる。その他は、流出係数や人の密度が小さくなると最大滞留時間が大きくなるという影響があった。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION