日本財団 図書館


それぞれの場合の油流出の臨界となる速度を表3.7-2(扁平・従来型)表3.7-3(扁平・緩衝型)、表3.7-4(尖鋭・従来型)表3.7-5(尖鋭・緩衝型)に示す。臨界速度を8 knotと設定して、この臨界速度を越えた領域を四角で囲んである。

緩衝型船首構造は従来型船首構造に比べ臨界速度で1.2〜1.8倍程度の有効性があることが判る。エネルギー吸収は速度の2乗に比例するため、エネルギー吸収で言えば1.5倍〜3倍程度のエネルギー吸収量を示すことが判り、油の流出防止の効果が大きいことが判る。

また、表で四角で囲んである臨界速度が8 knotを越える領域を耐衝突性を持っていると考えると、この緩衝型にすることによって従来型よりもはるかに大きな領域をカバーできていることが判る。VLCCが緊急停止操船と大角度転舵操船を組み合わせた場合に4 knot減速するのに要する時間はおおむねバラスト状態で70秒、満載状態で100秒であり、2船間距離で500m(バラスト)から800m満載)である。レーダー等により近代化されたVLCCであれば、確実にこの程度の減速は可能であると思われる。輻輳海域の上限速度である12 knotから4 notを減速した8 knotで油流出事故を確実に減らすことのできる緩衝型船首構造は非常に有効性が高いと考えることができる。

また、これは昨年度の詳細FEM解析において12 knotでの衝突で安全であった結果を参照し、12 knotを臨界速度と考えて修正を加えているため、実際はもう少し余裕があると考えられる。また、前年度の解析でも明らかになったように、尖鋭なバウを持っているコンテナ船などの場合には被衝突船の前進速度や角度を持った衝突の影響により、緩衝型の構造ではバウの折れ曲がりがより容易に起こると考えられることが判った。今回のシリーズ計算ではこの船首の折れ曲がりの影響が入っていないが、これを入れることにより、従来型の構造と緩衝型の構造の影響の差はより大きくでてくるものと考えられる。

 

3.8 緩衝型船首構造の設計指針

緩衝型船首構造を設計する際の指針を以下にまとめた。圧縮強度と曲げ強度との具体的なバランス等については今後の検討課題である。試設計事例を図3.8-1に示す。

(1) 通常荷重に耐える構造様式・構造寸法にする。即ち原則的に、船級協会規則を遵守する。

(2) バルバスバウの単位断面積当たりの圧潰耐力(圧潰圧力)を可能な限り低下させる。

(3) (2)を満たす条件下で、バルバスバウ断面全体の総圧潰耐力を可能な限り増加させる。

(4) (1)から(3)の要件を最も容易に満たすのは、外形状を扁平大型化して被衝突船の船側構造との接触面積を大きくする設計である。特に先端部分を尖らせないのが肝要である。

(5) バルバスバウの内部構造に横防撓様式を採用して、面外強度を維持しつつ船長方向圧潰耐力の低下を図るのも現実的で有効である。

(6) 横防撓様式を採用する範囲では、横防撓材を支持する水平桁及び縦通桁を配置する必要が生じる。この場合、桁付防撓材は船幅方向に平行に配置するとの配慮が望ましい。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION