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Fig.1 新海上ルート

 

その新しい交通システムでは、まず、日本列島の大動脈となる東西の両巨大都市圏を結ぶ東京・大阪間の「幹線ルート」を実現しなければならないであろう。本区間は、人口と産業の稠密度が最も高く、輸送力の増強が求められているにもかかわらず、今日まで海路はほとんど活用されていない。

その「幹線ルート」と対応する東名・名神高速道では、よく知られるように、一日の車両通行量は60万台(内7割が普通車、残りがトラック)を超え、そのうち1割が東京・大阪問を走行していると見込まれ、定常的な超過密状態を呈している。従って、新しい「幹線ルート」では、少なくとも一日1万台以上の車両を航送(モーダルシフト)できるほどの大規模な輸送力が求められよう。

この東西を結ぶ「幹線ルート」が実現すれば、国内物流を一新する確かな足掛かりが形成されるため、その他の時間価値が尊重される区間においても「高速海上ルート」を逐次開設することができるようになり、地上との緊密な連携をとれる海陸一体の新しい高能率な交通システムを全国的規模でバランスよく実現することができるであろう。

 

3. 求められる「超高速船」

主要幹線道でのモーダルシフトを可能とするためには、まず車両の地上走行と対抗できる優れた速度性能と高い経済性と共に、渋滞解消効果を期待できる程の大量性が求められよう。その大量性については、海上においても過密の問題や船員不足の問題があることからも、必須の前提条件としたい。また、結節点で無駄な時間を消費することなく、トータルでの所要時間の短縮化を図るために、車両乗降時間を大幅に短縮しなければならない。

そして、定時運航を可能とする良好な耐航性が求められ、また、保守点検整備が容易で高稼働率を維持できる優れた耐用性も求められる。さらに、大量性の要件を充分に満し、かつ船体建造作業の容易化と建造コストの低減化を図るために、堅牢な鋼船構造が求められよう。また、航行の安全を確保するために、すぐれた運動性能が求められ、旋回時には、搭載した多数の車両を転倒させたりスリップさせることなく、かつ、乗客や乗組員に不安定感を与えることなく、旋回方向の内側に船体を傾斜させて小さな旋回半径で安定性よく旋回できる旋回内傾斜を実現できることが望ましい。そして、乗客が長時間の乗船に耐えられるように、揺れの少ない安定した乗り心地と(騒音や振動の少ない)静粛性を確保しなければならない。

以上のような多くの要件は、在来船の改良やすでに開発された超高速船では、到底満たすことはできず、本稿でいう新しいコンセプトの新型高速双胴水中翼船(HTH)の開発が望まれる。その開発では、多様化したニーズにより適切に対応できるように、普通車を航送の対象とする「超高速ビジネスフェリー」と、主としてトラックを航送の対象とする「超高速ROROフェリー」の2つの船種が求められよう。

1] 「超高速ビジネスフェリー」に対するニーズ

高速道路で圧倒的多数を占める乗用車やワゴン、バン、小型トラック等の普通車による多岐にわたるビジネス活動やサービス活動、小口輸送等の効率化は、経済の活性化を図る上で、トラック輸送の効率化に劣らずきわめて重要な課題となるのは言うまでもなく、モーダルシフトをバランスよく成功させるために、まず、これらの普通車に対する対策が是非とも必要とされよう。

 

 

 

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