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はじめに

 

バングラデシュは世界最大の後発開発途上国(LLDC)の一つであり、99年度(98年7月〜99年6月)の国民一人あたり所得が284米ドルと極めて貧しい状況にある。経済の基盤が米作を中心とする農業生産で、同国GDP全体の32%、就業人口で63.2%を占める農業立国であることより、工業分野については国営企業の民営化など経済自由化路線の推進、外国投資の誘致などを政策の柱として民間活力に委ねる度合いが高い。

海運業や造船業といった海事産業については産業そのものの明確な位置付けがなく、関連政府機関も同産業を振興するための政策には従来手付かずの状況で、基本的なデータや統計も整備されていないのが実情である。

しかしながら、同国は国土の大半がガンジス、プラマプトラ、メグナの3大河川が形成したデルタ上に広がっており、国土の80%が沖積平野であるという地理的条件とモンスーンや洪水が多発するという気候的条件より、実態上道路や鉄道といった陸上交通より内陸水運に依存する度合いが極めて高いのが特徴である。河川や沿岸海域の輸送航路網を安全且つ効率的に保つことはバングラデシュを経済的に向上させる必要最低条件となる。

こうした観点から、同国の海事産業の実態を調査するために、内陸水運の効率並びに安全面を管理・監督する政府部局である内陸水運局(BIWTA)とコンタクトをとり、そこから入手した基本的データをもとに本報告書をまとめた。この度入手した同国の海事産業に関する情報の大部分は本邦はじめてのことであり、今後の同国海事産業の現状を認識するための貴重なデータと考える。

 

 

 

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