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例えば1995年に司法省は、マイクロソフトによるIntuit社の買収提案を阻止した。Intuit社の個人財務管理ソフトウェアであるQuickenは同市場の69%のシェアを占めており、一方のマイクロソフトのソフトウェアであるマイクロソフト・マネーは22%を占めていたことから、司法省は個人財務ソフトウェア市場の競争を脅かすとの理由で同買収提案を却下した。また、1997年に連邦取引委員会は、文具・オフィス用品業界の両雄であるステープルズとオフィス・デポの合併を、非競争的であり消費者に不利益をもたらすとの理由で阻止した。最近でも、連邦取引委員会がBPによるアモコの買収を承認する際に、ガソリンスタンド及びターミナルの除外を条件に付した例がある。

しかしながら一般的に言えば、M&A活動に対して米国政府が介入することは希である。1997年において、連邦取引委員会が合併に介入した事例は20件に過ぎず、合併阻止に至ったのはわずか2件である。同年に司法省は277件の合併を審査したが、却下されたものや条件の修正を求められたものはほんの一握りであった。

 

1-6 米国における今後のM&A活動の展望

 

米国経済が現在の好況を維持し、株価の上昇が続くとすれば、米国におけるM&A活動は今後も相当なペースで進むものと考えられる。しかし、最近の大型M&Aの主要な動因のひとつであった株価の上昇が大幅な調整局面に入れば、株式交換及び株式と現金による取引きのうまみはなくなり、M&A活動は鈍化するであろう。仮に株式市場における大幅な調整はないと仮定した場合、今後1〜2年の間に金融、ヘルスケア、通信、天然資源、テクノロジー等の部門で相当数のM&A取引が成立するとアナリストは見ている。

また、今後2〜3年にわたって国境を越えたM&A取引きが増加するというのが一般的な見方である。クレジット・スイス・ファースト・ボストンは、アジアの経済危機が収束に向かえば、アジアをターゲットとした国際M&A取引きが急増すると予測している。

 

 

 

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