日本財団 図書館


第6章 EMEにおける海運ファイナンス市場の動向及び資本対策の展望

 

6.1 市場見通しと分析

海運業の一番大きな資本源は、優先弁済債務ファイナンスである。単独で一番大きな要素というだけでなく、相当のファイナンスの回転率があり、その結果、海運銀行と業界との定期的な相互作用を生み出している。幾分驚くべきことであるが、海運銀行は市場リスクを査定するために、詳細な特定の市場分析を行うことはあまりない。融資の申請を扱っている会計担当者は、ある程度の市場分析は行うが、これは融資申請の内容を確認するためのもので、特定の市場部門をターゲットにして銀行が積極的に動くためのものではない。大手の商業銀行のいくつかは、特にヨーロッパ大陸内では、一人の専門アナリストを有することとなろう。その結果、市場展開についての見方は、従来そして現在の市場感覚を反映する傾向になる。このため、多くの銀行は、彼らの市場がどこに存在するかはわかるが、いつ、どういった展開となるのかについては、漠然とした見方しか持たないこととなるであろう。これは、銀行が情報へのアクセスができないとか、定期的な本来の市場調査を委託できないためではなく、彼らがこうしたものに経費を費やしたくないためである。銀行は自分たちの職員に市場分析を行うための給料を既に払っていると感じているか、あるいは、優先弁済貸し出しであるため、いかなる大きな市場リスクも受けるつもりはなく、市場分析はそれ程重要ではないと考えているからである。市場についての理解が難しければ難しいほど、銀行は借り手の財政面の強さに頼ることになる。

現在の海運市況の低迷をたどると、以下のとおりである。

□1995年に始まるドライバルク及び定期船部門の供給過剰(造船能力の大幅拡大及び過熱的発注による)

□1997年に始まったアジアの財政危機及び停滞が続く日本経済による需要の下落

□1998/9年の非常に低い石油価格(貿易業者による過剰在庫の発生と石油会社の調査開発費の削減がオフショア部門へ影響を及ぼすこととなった)

8つの主要海運銀行(EMEに供与される海運資本の30%にあたる)に対しての聞き取り調査の結果、各海運部門の展開に関する一般的な見解は下記のとおりである。

 

060-1.gif

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION