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5.2 銀行優先弁済債務-海運業の主要債務供給源

業界の資本分析を行うことにより、商業銀行が供与する優先弁済債務は極めて大きな割合を占めており、ヨーロッパ海運業の総資本の48%、総債務の76%となっていることがわかる。この債務は、ほとんどの場合、大手商業銀行の海運専門部門か、海運専門銀行によって、供与されている。債務はほとんど全て「優先」であり、何らかの形で他の債権者より上位にランクされ、通常、船舶資産に対して第一順位抵当権を有している。

海運業が銀行債務に依存するのは、他の資本源の利用が限られていることにもよるし、又、個人株主がプロジェクト・ファイナンスや親密な借り手/貸し手関係を好む事にも起因する。

他の資本源へアクセスが限られているのは、2つの理由からである。第一に、海運業は株式市場の利用が困難であるため、アナリストがカバーする広範囲な情報を受けられないことである。第二に、業界の個人株主がその活動、特にその財政状態について透明になることを嫌うためである。しかし、海運業界が投資リスクに応じた妥当な株式配当を達成するのに苦闘していることを除けば、この傾向は両面とも改善に向かっている。これらの点に対処するまでは、投資による資本へのアクセスも、それに代わるより広範な投資市場へのアクセスも限られるであろう。

海運業界は、特に「商品取引型」の事業では、参入障壁がほとんどない。このため、海運は比較的少額のプロジェクト・ファイナンスに向いている。この場合、特定のプロジェクトに対してある程度の理解が必要である。これには銀行融資が向いている。また、借り手と貸し手との間の緊密なやり取りが、まずプロジェクトを理解し、監視するために必要であり、その結果、相互の信頼関係を築き上げることになり、借り手は決められた債務を履行するものと信用される一方、貸し手は短期的、あるいは中期的な市況の落ち込みについてさえも理解を示すことになるのである。こういった要因が、融資の主要要素で「相互信頼」を導くのである。

このように、銀行債務は、今日、海運業の資本の最も重要なソースであり、今後も当分はこの状態が続くであろう。

 

5.3 優先弁済債務-貸し手及び借り手の規準

貸し手による優先弁済債務供与の決定には、通常、下記の貸し付け規準が満たされる必要がある。

・適格な法人組織及び株主

・満足な事業活動

・信頼出来る経験豊富な経営陣

・十分な担保

・堅実な財政事情

 

 

 

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