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個人又は部分的に個人によって所有あるいは支配されている海運会社上位20社のリストを、第5章に示す。

 

1.12 EMEの海運金融市場の動向

現在の金融市場の動向を確認するために、EMEの商業債務ポートフォリオ総計の30%を占める主要海運銀行8行に対して、非公式の聞き取り調査を行うとともに、最近出版された情報をもとに整理を行った。

金融界における海運市場に関する現在の見解は、下記のとおりである。

 

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意見の一致が多くみられ、これは、貸し手が同様に動くであろうことを示しており、海運業の周期的な変動に拍車をかけることとなろう。

商業銀行の貸付け規準は、相変わらず、健全な財政状況、優れた経営陣と実績及び高質の船舶資産である。全ての大手銀行で、企業貸付けを好み、船舶のプロジェクト貸付けを避けるという傾向が明らかにみられる。なお、事案の対象となる船舶は依然として重要であり、従来からのローン構造が変わる兆しがあまり見られない状態では、特に担保として重要である。貸付け規準は、1998/9年の間に厳しくなったが、これは低迷する海運市場や競合する銀行のプレッシャーが減少したことによるものである。相場は上昇しているが、ほんのわずかである。標準以下のプロジェクトに対して、クレジットを受けられるかどうかは問題である。

銀行が海運債務の不履行を経験したという報告は、ほんの数件であり、一般に金額的にも少額であると見られる。

 

1.13 EMEにおける海運債務や投資の利用可能性

海運市況の悪化のために、海運への資金供給に積極的にかかわる銀行の数は減少し、残りの貸し手による「質への逃避」という結果を生みだした。銀行合併の傾向はこのまま継続し、その結果、海運にとって債務の利用可能性が更に減少することになるかも知れない。一つの事例として、海運クレジットに対するヨーロッパのシンジケート・ローン市場への参加者が減少していることがある。このため、今日では、借り手が全面引き受けのあるローンの提示を受けることは、非常に困難であり、「クラブ」取引の方がより普通になってきている。

現在のところ、海運業のハイイールド債市場へのアクセスは制限されている。これは、一時的なものであるが、ハイイールド債発行者は、しっかりした成長戦略を持ち、より高い信用格付けを有する必要があるだろう。

 

 

 

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