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欧州におけるシッピング・ファイナンス調査

 

第1章 要約

 

1.1 前書き

本報告書は2部構成としており、第1部(2章、3章及び4章)では、世界及びヨーロッパ地域の海運業の資本及びそのソースについて述べる。本報告書では、ヨーロッパ地域を中東まで拡大して包含しているが、これは中東の海運業も部分的にヨーロッパ資本によって営まれていること(少なくとも銀行債務については)によるためである。第2部(5章及び6章)では、使用される金融商品、資金供与のための規準及びヨーロッパの海運業への資金供与に関する現在の金融市場の状況について述べるとともに、銀行債務、債券及び株式市場の今後の動向についても記述する。

 

1.2 世界の海運業の資本評価

海運業は、所有者及び国際貿易の観点から見て、非常に細分化された多国籍産業である。投入された株式資本の多くは上場企業より、むしろ個人の手に置かれている。そのため、海運業の資産価値を直接に査定するために利用可能な公開情報は限られている。しかしながら、船舶そのものは、譲渡可能でしかも為替レートによって歪められることのないそれぞれの市場価値を有しており、また、船舶に関する技術的な仕様や船齢などが数々のデータベースに綿密に記録されている。従って、この様なデータベースと各船種の現在の市場価値を用いて、世界の船腹の価値を査定することが可能である。

分析の結果、23,139隻から構成される世界の船腹量は、1999年1月1日現在、75,800万DWTで、市場価値は2,211億ドルである。海運業のインフラ資産、運転資金及び流動資産をも考慮に入れると、世界の海運業の総資本評価額は3千億ドルにまで増えるものと推算される。

 

1.3 ヨーロッパ及び中東(EME)の海運業の資本評価

世界ベースの分析と同様のアプローチが、ヨーロッパ及び中東(以下、「EME」という。)支配の船腹の分析にも適用できる。9,926隻から構成されるEMEの船腹量は、1999年1月1日現在、36,050万DWTで、市場価値は936億ドルである。インフラ資産、運転資金及び流動資産をも考慮にいれたEME海運業の総資本評価額は、1,270億ドルと推算される。

 

1.4 新造船及び中古船購入に必要な投資資本

1999年1月1日現在の新造船手持ち工事量は、DWTベースで、世界の現存船腹量の14.4%に相当し、タンカーに集中している。(タンカーはDWTベースで手持ち工事量の57%を占めている。)市場価値の観点から見ると、新造船手持ち工事量は820億ドルで、世界の現存船腹の市場価値の37%に相当する。この内、タンカーは、260億ドルで、手持ち工事量評価額の31%となっている。

 

 

 

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