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日本、ノルウェー、ロシアによる国際共同研究事業、「国際北極海航路計画(International Northern Sea Route Program:INSROP)」が、北極海航路に関する広範な知識ベースを構築することを目的として1993〜99年まで実施され、シップ・アンド・オーシャン財団は枢要な役割を果たした。広範なテーマに関する総計167編の各種論文が刊行された他、北極海航路運行シミュレーション研究、地理情報システムであるINSROP GISデータベースや北極海航路環境アトラス等の成果が生れ、一般の利用に供されている。

 

3] CO2以外の温室効果ガスの排出削減

舶用ディーゼル機関からのN2Oの削減に関しては、抜本的な対策がないというのが現状であろう。これは、NOに比して微量のN2Oを燃焼状態の制御対象とすることが困難であること、燃料中の窒素分の酸化によるN2Oの生成過程が充分に解明されていないことなどによる。陸上においても、今のところ、燃焼過程からのN2O排出については削減目標値が設定されていない現状にある。

一方、排ガス中のNOxを後処理する技術としてはアンモニア選択接触還元法(SCR法)が開発されており、一部の船舶にも搭載されている。また、脱硝率が高くかつSV値が高い場合、NOxだけでなくN2Oも還元分解される事が報告されている。しかし、SCR装置は還元剤や反応空間が必要であり、多くの船舶で利用するためには、小型化などの技術開発が必要である。現在の脱硝装置には還元剤としてアンモニアや尿素を使用するので、その格納場所が必要となり、危険物としてのハンドリングの煩雑さや機関室や荷室等スペースユーティリティ上も問題が生じる場合が多い。そこで、燃料油からエチレン、プロピレンなどの炭化水素を抽出し還元剤として利用する舶用脱硝プラントについて、シップ・アンド・オーシャン財団の資金援助で研究が行われ、効果が確認されている。また、将来は自動車エンジンのように、排ガス中の未燃分とNOxを触媒反応させるディーゼル3元触媒の開発と舶用への応用も必要となろう。

また、還元反応に適した温度で常に運転される陸上固定機関と異なり、船舶主機関は機関負荷の変動が大きく、特に機関始動時や部分負荷時など排ガス低温時の脱硝効率が悪いという欠点がある。このため、低温時にはマンガン‐ジルコニウム複合酸化物(Mn2O3・2ZrO2)やバリウム‐銅化合物(BaCuO)等の吸着剤にNOxを吸着させ、一定温度以上になってからNOxを分解するシステムの研究をシップ・アンド・オーシャン財団では実施している。これは主に出入港の多い内航船を対象とした小型システムの開発を目標に行っているものである。

ここで紹介した脱硝装置はNOxを対象としており、直接N2Oの分解を対象としたものではない。今後は地球温暖化の観点からNOxとともにN2Oの削減を目的とした技術開発が必要になるであろう。

 

 

 

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