日本財団 図書館


減速航行については、社会経済的影響からみて実現には困難が伴うが、その削減効果は大きい。従って減速航行は、大幅かつ短期間でのCO2排出量削減が外航船舶に求められた際のオプションとして議論が進められる必要がある。減速航行を導入する場合、効果的かつ公平にこれを実施する方策を別途検討する必要があるが、一般的に言えば「燃料単価の上昇」が減速航行を促す方向に作用すると考えられる。このために取り得る具体的な方法としては、いわゆる「環境税」の考え方がある。環境税は付録4に示すように、すでに多くの国での実施実績があり、今後のCO2排出量抑制施策として、さらに多くの国が導入を進める可能性がある。

外航船舶に環境税を適用する場合、バンカーオイルに一定の税率(税額)を掛け、販売実績に応じて各国から徴収する方法が考えられる。これによって、燃料単価の適切な引き上げが図られれば、燃料コストを低減するためにオペレータが減速航行を指向するインセンティブになる。また、荷主を輸送総量を節減するマインドへ誘導する効果もあり、輸送総量の伸びを抑制する効果もあろう。当然のことながら、集められた税はより一層の温室効果ガス削減技術の開発や、発展途上国への技術援助などに再投資される必要がある。

ただし、その導入には以下のような大きな問題があることに留意する必要がある;

1) そもそも保税扱いのバンカーオイルに税をかけることができるのか。

2) バンカーオイルに掛けられた税の徴収、再投資の役割を誰が担うのか。IMOにその権限があるのか。

3) 論理的に税の最終負担者は誰なのか。荷主なのか、船主なのか。その調整を誰が図るのか。そもそも、税導入に伴う輸送コストアップを価格転嫁できるのか。

これらの課題は、国際的に論議することが必要であることに加えて、外航海運に従事する業界側だけの論議では解決が図れないものである。また、税率(税額)をどの程度にするのかについては、世界経済に悪影響を及ぼさないことを前提に、最終価格に転嫁する、あるいは広く浅く夫々が負担するような率(額)を経済学的に分析する必要があると考えられる。その結果を踏まえて、荷主・消費者など広範なステークホルダーを交えた議論を今後行っていくことが適切である。

 

以上述べてきたように、減速航行を除く短期的削減方策だけでは、第2評価基準である温室効果ガス排出総量の削減には不十分(1997年に比してCO2排出量は30〜60%増)であり、次に述べる中期、長期的検討課題にも取り組んでいくことが必要と考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION