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しかし最近ではコントラプロペラあるいはアジポッドなどの推進器との組み合わせにより、従来どおり一軸で実用化する開発動向も報道されており、コンテナ船の大型化が更に一段階進む事も予想される。

ただし、コンテナ船の大型化は同時に港湾施設及び周辺施設の改修を必要とする。これは、先進国等で既に大型港湾施設を持っている場合であっても、陸上への荷捌きも含めた荷役作業が隘路となるケースがあるためである。コンテナ大型化は、大水深バースに加え、ターミナル面積の増大、ガントリークレーンの基数と規模の拡大、深夜開港などをふ頭側に要求することになる。特に、わが国の場合、バックヤードの狭さという物理的な問題に加え、24時間荷役作業化の遅れ、陸上側輸送体制の40ftおよび45ftコンテナへの対応遅れ、船社専用を原則にしている公社管理のあり方など、NIES諸国や米国と比較してコンテナふ頭の整備や管理方法やコスト負担について遅れがあることは否めない。

さらに、国際コンテナ輸送はハブ港間の大口輸送と最終消費地もしくは生産地との小口輸送の二極化が進むと考えられているが、多くの発展途上国においては、国際貿易に対応していくための港湾施設インフラの整備に今後は多大なコストをかけなければならないという問題を引き起こすことも考えられる。

船舶の大型化は、一般的に輸送エネルギー効率の向上をもたらすものであるから、温室効果ガス対策として効果のある方策と言える。従って、今後建造される船舶(特にコンテナ船)については、大型化を一層促進することが望ましい。

 

5] 減速航行

次に、運航面でのCO2削減方策の一つとして減速航行について検討した。

減速航行が輸送エネルギー効率を向上させることは、主機出力が船速の3乗に比例する船舶の特性からみても、また1970年代のオイルショック時期に多くの運航事業者が輸送エネルギー効率の改善対策として採用したことからも明らかである。減速航行は新たな機器や大きな技術的ブレークスルーなしに対処可能な方策であり、仮にコンテナコンソーシアムや航路を限定した専用船航路でボランタリーに行えば、確実に効果を期待できるものと言える。

減速航行の効果に関する試算にあたっては、タンカー及びバルカーでは現在の運航速度を10%低下させる、コンテナ船では20%低下させるものと仮定した。表7.2-1の対策3に示すように、減速航行のCO2排出削減効果は大きく、第1評価基準である輸送エネルギー効率の向上でみた場合、ゼロオプションに対して27%前後の向上が見込まれる。またCO2排出量でみた場合、2020年の排出量は1997年に比して、upper caseでは約25%の増加、lower caseでは約1%の増加にとどまるものと考えられた。

将来の輸送量の伸びをどう見込むかにもよるが、前述した他の短期的方策を併せて実施することによって、計算上は第2評価基準(2020年におけるCO2排出総量の1997年比6%削減)にも到達可能な削減レベルが期待できる。

 

 

 

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