7.2 温室効果ガスの排出削減方策及び提言
7.2.1 評価基準の設定
外航船舶運航に伴う温室効果ガスの削減問題はIMOで議論が始まったばかりであり、目標とすべき削減率などは設定されていない。しかし、気候変動枠組条約の本来の趣旨からすれば、外航船舶運航に伴う温室効果ガス排出量の削減についても評価ができるような何らかの基準を設定し、これ向けて削減対策に取り組んでいくことが望ましい。
そこで、ここでは下記のような2段階の評価基準を設定し、CO2排出量削減方策の効果などを検討することとした。
第1評価基準(必要レベルとして)
2020年までに、単位輸送量当たりの外航船舶の運航に伴う温室効果ガス排出量(又は輸送エネルギー効率)を1997年に対して6%以上の削減を目指す。これは、外航船舶の運航に伴う温室効果ガス排出量の総量を6%以上削減するという下記の第2評価基準レベルへ到達するために最低限の条件である。
第2評価基準(十分レベルとして)
2020年までに、外航船舶の運航に伴う温室効果ガス総排出量を1997年に対して6%以上削減を目指す。これは、わが国を含む先進諸国の陸上発生源からの温室効果ガス削減目標にほぼ見合うレベルとして設定するものである。
必要レベルである輸送エネルギー効率の向上の達成が十分であれば、燃料費が輸送コストの大半を占める外航海運輸送では輸送コスト自体の減少を引き起こし、新たな輸送需要の掘り起こしや他の輸送部門からの輸送量の振替が生じる可能性がありえる。
そうなると第2評価基準である十分レベルの達成は覚束なくなるが、その場合にも、世界の輸送部門全体での温室効果ガス排出総量の削減に寄与することになり、結果として地球温暖化防止という最終目標達成に向うことができると考えた。
従って、ここではまず、上記の第1評価基準(輸送エネルギー効率の6%以上の向上)を目指すものと考え、さらに上位のレベルとして排出総量の6%以上の削減を目指すこととした。
7.2.2 外航船舶の運航に伴う温室効果ガス排出量削減方策の検討及び提言
ここでは、短期的(概ね2010年頃までに実施可能)、中期的(概ね2010年以降に実施可能)、長期的(実施にはさらに長期的な開発検討が必要)の3つに区分して、外航船舶からの温室効果ガスの削減方策及びその効果について検討し、将来に必要な技術開発や国際的に検討すべき課題を含めての提言について考察を行った。
なお、以下に掲げる削減方策のうち幾つかのものについて、その効果を定量的に把握するためにCO2排出量及び輸送エネルギー効率の試算を行った結果を表7.2-1に示した。これらの試算は、それぞれのケースについて一定の仮定を置いて将来予測を行ったいわば上記評価基準に対しての「効果の目安」である。計算上の仮定や試算結果の詳細については付録3を参照されたい。