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7.1.2 外航船舶の運航に伴うCO2排出量の将来予測

外航船舶から排出される温室効果ガスのうち、95%以上を占めるCO2は燃料の燃焼によって生じる。従って、CO2以外の温室効果ガスへの対処も勿論必要であるが、まずは燃料の燃焼由来のCO2排出量の将来動向を把握し、対処を進める必要がある。

外航海運の荷動きは、コンテナ貨物割合の増加や、専用船で運搬される貨物割合の増加など、輸送形態の変化はあるものの、総量としては過去10年間にわたって年数%の割合で直線的に増加してきた。これは、世界全体の経済成長に伴い、国際貿易が逐次拡大してきていることに起因する。

今後20年間程度をみると、既に先進諸国は安定成長に入っている一方で、発展途上国における経済成長が見込まれており、これに伴って経済成長率にほぼ見合う形で、外航船舶による輸送量も増加傾向が継続すると考えられている。

このような考え方に基づき、今年度調査においては造船業基盤整備事業協会がダブルハル化による船舶需給量等への影響評価を行った調査において用いた貨物量の伸び(1997年の輸送総量に対してタンカー:2.3%/年、バルカー:1.8%/年、コンテナ:2.8%/年相当)をもとに、CO2排出量の将来予測を行った。

ただし、タンカーによる原油輸送については約20年後には原油埋蔵量の底が見えてくる可能性があることや、先進国の省エネルギー施策の効果、あるいはわが国などが積極的に進めている原油からLNGへの基幹エネルギーの転換など、構造的な変化が進むことで、その輸送量が減少または頭打ちになって行く可能性があることも考慮して、輸送量の伸びが低めに推移した場合(lower ase)として年1.0%相当を用いた予測も行った。これは、世銀などによる2000年代前半の世界経済成長率が2%であることをもとに、上述の原油輸送量減少の可能性も考慮して設定したものであり、同時に過去5年間の原油輸送量の平均的な伸び率でもある。なおLNG輸送については、今後大幅な増加も想定されるが、元々タンカーによるウェットバルク全体での輸送量に占める割合が小さいため、10年あるいは20年後に占める割合もそれほど大きくならないこと、その伸び率はパイプラインの敷設状況に大きく影響される可能性があることから、ここでは特に分けて扱うことはしなかった。

バルカーについては、大きな構造変化の要素が少ないこと、過去5年間のトレンドと既存の数値に大きな差異がないことなどから、単一のケースとして固定した。また、石炭輸送については、各国の環境保全施策(CO2及びSOx対策)の進展の中で消費量が低下する(輸送量が伸びない)可能性もあるが、一方で石炭ガス化技術に伴って消費量が伸びる(輸送量が低下しない)という考え方もある。

最後に、コンテナ輸送については、経済のグローバリゼーションの中での製品輸送、半製品輸送の増加に伴い、今後大きく増加する可能性があるとの見方もある。とりわけ、中国のWTO加盟に伴い中国向け農産品の輸出が大幅増となる可能性があること、さらに東欧、アジア、中南米の市場開放に伴う機械、部品の輸入増、これら地域からの完成品の輸出増が、輸送量の伸びに大きな影響をもたらす可能性がある。事実、過去5年間の全世界のコンテナ取扱量は年6%程度の伸びを示している。このような背景を考慮すると、前出の2.8%/年相当という伸び率は控えめな予測となっている可能性があることから、タンカーとは逆に、輸送量の伸びが高めに推移した場合(upper case)として、至近5年間の平均伸び率である6%/年相当を用いることとした。

 

 

 

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