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5.2.3 HFCs排出対策

陸上の自動車用クーラーの整備や業務用冷蔵・冷凍庫の整備においては、整備時の冷媒の漏洩を防止するため、冷媒の漏洩量を最小限に抑える器材が使用されている。例えば、再充填時に接続パイプ部を事前に吸引する装置、冷媒を回収ストックできる充分なリザーブタンク等である。しかし、舶用冷凍庫や冷蔵・冷凍コンテナでは、フロン類の使用混在もあり、代替フロン専用のこのような器材はあまり使用されていないのが現状である。

冷蔵・冷凍コンテナは、直射日光が当たり高温になる甲板上や換気の悪い船倉下部などに設置される場合も多く、また荷役に伴う振動や衝撃も相当に多く、さらに荷積み直後には高負荷運転が行われるなど、陸上の冷凍施設より過酷な使用条件で使用される。また、メンテナンス間隔も陸上に比較して長くなることが予想される。

このため、例えば、コンプレッサー内やリザーバーなどに水分の浸入またはパッキングのかけらなどの混入が疑われた場合には、装置の保全上冷媒全量を入れ替えることが多いが、その際は冷媒の種類が異なることもあるため、充填されていた冷媒を全量廃棄するなど、再充填作業時の漏洩量はかなり多いと言われている。また、メンテナンス時において規定量より多めに冷媒を充填する場合もある。

 

以上のことから、陸上施設で既に行われているような冷媒の再充填技術の向上及び作業工程の改善は技術的に十分可能なはずであり、そのような対策でフロン類の放出量削減に大きな効果があると考えられる。なお、一部の冷蔵・冷凍コンテナについてはR12やR22などのフロン類が冷媒としてまだ使用されており、これらの廃棄時の作業管理も重要である。

一方、現在使用されているフロン類の代替物質の研究も進められている。非フロン系冷媒の性能比較を表5.2-1に示した。古林ら24はフロン類の代替物質として、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、エタン等の混合ガスが冷媒として十分な性能を持ち得ると報告している。これらの代替物質は化学工場用冷却装置で既に使用実績があり、欧米で販売されている冷蔵庫など家電でも一部導入の試みがなされているが、いずれのガスも可燃性が高いことから輸送機関の冷凍・冷蔵コンテナへの応用にはより一層の安全対策が重要であり、実用までに種々の技術開発が必要であると考えられる。

アンモニアは産業用冷凍機で広く使用されており、舶用においても冷凍船などで実績が多いが、ガスが弱燃性で毒性を持っていることから冷蔵・冷凍コンテナへの適用は困難と考えられる。また、炭酸ガスは自動車用エアコンへの適用が検討されているが、原理上31℃以上の環境下での運転が難しいことから、アンモニアと同様に固定の冷凍冷蔵施設などへ応用は期待されるものの、冷蔵・冷凍コンテナへの適用は困難であると考えられる。

 

なお、現在流通している発泡ウレタンなどの断熱材はHCFC類が発泡剤として利用されているものがほとんどであり、廃棄処理時にフロンの発生が予想される。これらの断熱材廃棄時の漏洩量についても、今後は何らかの対策を講じることが望ましいものと思われる。

 

24 古林義弘、山田一俊、梅田歳樹(1999)「ハイドロカーボン冷媒を用いた空調・冷凍装置」、西部造船会論文概要、98th,、p1‐7

 

 

 

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